研究課題/領域番号 |
17K02198
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研究機関 | 長野県立大学 |
研究代表者 |
馬場 智一 長野県立大学, グローバルマネジメント学部, 准教授 (10713357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教哲学 / 無限判断 / 超越 / 尊厳 |
研究実績の概要 |
研究計画のうち、「コーヘン宗教哲学の形成とその内実」については、『純粋認識の論理学』における無限判断概念についての調査を行った。学的認識を構成する三つの判断(根源判断、同一性判断、矛盾判断)のうち、根源判断の性質を説明するものとして、無限判断は位置付けられている。これまでの先行研究でコーヘンに帰されていた無限判断概念とは、若干異なっていることが明らかになった。このことは、コーヘン哲学全体の評価や、体系のなかにおける無限判断の役割を評価する際に基礎となる視点である。この基礎的な視点を獲得できたことは本研究課題にとっては意義のある成果となった。 また、「『ユダヤ教を源泉とする理性の宗教』の現代的意義」については、コーヘン哲学の現代的展開の一例として、ソフィー・ノールマン(1975~)の超越の現象学についての調査を行った。ノールマンは、人間の尊厳をめぐる現代的議論に、「人間存在のアンチノミー」が見られるとし、そこからの脱出の方途として、これまで宗教との関わりで理解されてきた「超越」概念を、超越概念の理解を現象学的に記述することで、超越概念の脱神学化、宗教化を図った。この問題を扱ったのが『超越の現象学』ⅠとⅡである。その際、世界とその外部についての発想が重要となるが、そこに、コーヘン、ローゼンツヴァイク、レヴィナスの議論が援用されていることを、ノールマンの『超越の現象学』以前のユダヤ教と哲学の関係に関する研究との連続性明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コーヘン宗教哲学の形成と内実については、その解明がやや遅れている。「コーヘンの子供たち」との比較研究については、ローゼンツヴァイクとの比較作業、スピノザ受容についての解明が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
宗教哲学の内実について、今年度明らかになった無限判断の元来の用法がどのように活かされているかに留意しながら進めていく。スピノザ受容をめぐり、ローゼンツヴァイクやレヴィナスとの比較作業を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は、渡仏により研究発表や研究打ち合わせを行う予定であったが、コロナウィルスの影響により依然としてできなかったため。
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