研究課題/領域番号 |
17K02206
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
末永 高康 広島大学, 文学研究科, 教授 (30305106)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 『儀礼』 / 変礼 |
研究実績の概要 |
本年度は『儀礼』の記述において礼の儀節がどのように分岐するのかを分析することにより、初期礼学の展開の一端を明らかにした。 田中利明「儀礼の「記」の問題」(『日本中国学会報』19、1967年)に従い、各篇の冒頭部からはじまって「始終一貫した儀式の次第」を書き記した部分を「経」、それ以外を「記」と新たに分類し直すことにより、『儀礼』の各「経」の相対的な成立の前後のあらましを明らかにすることができるが(拙稿「『儀礼』の「記」をめぐる一考察」、『東洋古典学研究』39、2015年、参照)、『儀礼』の古層に属する士冠礼・士昏礼「経」では、礼の儀節の分岐がほどんど記されておらず、これらの「経」の作者が各礼の「儀礼の典型を記すこと」に集中しており、儀節の分岐にまで目配りする余裕がなかったことを示している。後に成立した諸「経」では、次第に儀節の分岐が書き込まれていくようになるが、礼の典型を記すという点に変化はなく、当該の礼における主要なプレイヤーが不在となって礼の儀節を大きく変えてしまうような場合は、最後まで「経」に組み込まれることはなかった。そして各「経」が成立した後は、それぞれの「経」が内部に組み込むことのできなかった礼の儀節の分岐が、それぞれの「記」によって補われることになるが、それもプレイヤーの付加・不在・変更を中心とした、人・物・所・時を変数とする礼の儀節の分岐が大半であり、不測の事態によって余儀なくされる儀節の分岐については聘礼「記」に例外的に記されるに過ぎない。以上のことを明らかにするとともに、その過程において以下の重要な知見を得た。 郷射礼「経」は大夫が参加することを前提としてその射礼に関する部分が構成され、後にその飲酒礼に関する部分が郷飲酒礼「経」を利用して補われた。 特性饋食礼に類似した形で構成された少牢饋食礼のプロト「経」が今本では少牢饋食礼「記」として残されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に記した通りに『儀礼』における変礼(『儀礼』においては儀節の分岐として記される)の分析を行うことができ、また、研究実施計画で予定していた訳注作業についてもその成果を学術誌上に公開することができたことから、「おおむね順調に進展している」との評価を与えた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を引き継いで、次年度は『礼記』曾子問篇を中心として、『礼記』中に残された変礼についての記述の分析を行っていく。また、訳注作業についても、その成果を学術誌上に継続して公開していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった図書の刊行が遅れたために、本年度中に購入するすることができずに次年度使用額が生じた。図書が刊行され次第、購入し助成金を使用する予定である。
|