研究課題
基盤研究(C)
「変礼」とは礼が直接に規定していない状況下における対処法である。現実におけるすべての状況を覆う形であらかじめ礼を規定することはできず、この「変礼」の議論を通じて礼の規定はより完備されたものとなっていく。本研究は『儀礼』の「経」「記」や『礼記』の檀弓篇、曾子問篇を主たる対象とし、これらの資料に見える「変礼」の議論の分析を通じて、先秦時代における礼についての学問のあり方の変遷の諸相を明らかにした。
中国思想史
『儀礼』の各篇や『礼記』中の礼の「記」(注釈)としての諸篇に対する思想史的な研究は従来ほとんど行われてこなかった。旧来の礼学においては、諸経から帰納的に礼の体系を復元することに主眼が置かれ、礼の記述が完備化されていく過程の所産として礼経の諸篇を歴史的に見る視点が欠落していたからである。本研究は「変礼」を切り口とすることによって、礼経の記述の完備化の過程を明らかにし、これらの諸篇を思想史研究の俎上に載せることを可能にした。ここに本研究の学術的意義がある。、、