研究課題/領域番号 |
17K02207
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
市來 津由彦 二松學舍大學, 文学部, 教授 (30142897)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二程子 / 程顥・程頤 / 東アジア近世思想史 / 南宋時代 / 朱子学 / 朱子語類 |
研究実績の概要 |
中国宋明の士大夫思想文化の基礎としての道学の思考枠を定立したのは、北宋の程顥・程頤兄弟である。本研究は、その後の南宋初から南宋末までの期間の「二程」関連の思想文化現象を精査し、その展開を士大夫道学運動年表としてあらわすことを当初のねらいとする。 当初計画の本年最終年度は、①『朱子語類』巻95~97「程子之書」の解読と検討、②南宋前期および後期における程門関係者以外の士大夫の程子像の探査と、③南宋士大夫道学運動年表(仮称)の作成、ということを挙げた。 上記①は順調に動いている。②以下については本年度も遅延している。すなわち、①については、『朱子語類』翻訳のために発足させた「広島大学朱子語類研究会」において資料解読と分析を進めている。②については、a、朱熹の四書の学の形成に重要な役割を果たす『孟子』論について、王安石の顕彰運動と道学側の別路線の新解釈とが同時に興起しているという、北宋における『孟子』の顕彰を追跡した(6月二松學舍大学での孟子に関するシンポジウム)。また、b、完成した四書の学の思考の核となる朱子学における「理の探究」について総合的検討を試みた(9月上海復旦大学での「中国哲学の豊かさの再現」国際学会)。aは、後述「今後の研究の推進方策」で述べる南宋の孟子像論の前提となる。孟子像の展開を通して道学の浸透がはかれると考える。bは、その浸透度をはかる基準の検討に位置尽くものである。 研究経費は、上海での国際学会講演と、電子資料の購入とでほぼ執行しきった。後者は、従来使用していた電子資料が広島大学所蔵なのので基礎的なものは新規購入が必要であり、しかし予定していた資料が編集替えにより発売が春以降になるとの情報が前年末に入り、繰り越しして待機していたが、秋になり発売中止が知らされた。そこで使い勝手がやや不便ながら内容的には同等にせまる電子資料を購入した。このため執行が遅れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅延した。所属大学が広島大学から二松學舍大学に変わり、研究素材や物品の管理方式もかなり異なり、また所属組織から求めらる教学上の課題をこなすことに対応したため、2019年度の研究も予定項目に対し充分には進まなかった。延長年度中に回復に努めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画として2019年度は、①『朱子語類』巻95-97「程子之書」の翻訳とその内容研究、②南宋前期、後期における程門関係以外の著名士大夫の「程子」像、③南宋士大夫道学運動年表(仮称)の作成、ということを挙げた。2017年度計画の②「南宋初における程門の動向と彼らの「程子」像の探査」は2018年度計画②の基礎になり、2019年度計画②はさらにその延長にある。ただし計画が大幅に遅延している。そこで、これまで探究対象を広くとる方針であったが、それは時間的に困難なので焦点を絞ることとし、南宋前期の『孟子』論の様態の追究により朱子学形成前の道学の展開様態がはかれると予想できることから、、「二程」からみる道学の南宋における展開という本研究を、北宋南宋を貫く程学の孟子論の浸透という視点からかたちあるものにしようと考えるに至った。北宋の『孟子』顕彰の追跡はこの南宋前期の探査の前提に位置尽くものである。たたし資料上の問題もありこれをまとめるには至らず、本研究の期間延長を申請するに至った。『孟子』の道学派的解釈の展開という点に焦点を絞りつつ、このステップに沿って成果を出すようにしたい。 見通しを言えば、「二程子」のうちの弟の程頤の思考は、朱熹において北宋的な像から朱子学的な像に転換していることが明確であり、兄の程顥の思考がどのようにみられているのかが、枢要な問題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画で計画した予算はほぼ執行した。ただし資料はあっても研究に振り向ける時間が予定した通りにはいかず、成果の執筆と刊行は2020年度以降になるため事業期間の1年延長を申請し、承認された。この延長年の研究のために少額だけ補助金を残した。残金は全体期間の研究データ整理用のメモリやファイルなどの消耗品にあてる予定である。
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