本研究は二程(程顥・程頤)の「像」から南宋の道学の展開を見直す。思想は時々の社会現象に対応すると同時に、特定の思考枠組や理念的側面を持ち、その思考枠組から社会現象を評価する。思想の力はその枠組にある。結果としての事実現象的な現象にとどまらず、その思考枠組の展開を捉えることが、思想史の記述には要請される。道学という思考枠組を開いた二程の思想の共通面と兄弟の表現の相違面に着目し、二程の像を評価基準とすることは、この要請に応えるものである。 また、対象は南宋期にとどまるが、本研究の視点は朝鮮朝、江戸儒学の評価基準としても応用でき、近世東アジアの儒学思想連動という視点の思想史の記述にも有用である。
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