本研究は東アジアの海域世界で守護女神として圧倒的な信仰を集めている媽祖を対象に、中国の民間で芽生えたその崇拝が、多様な宗教的伝統と接触を重ねて信仰圏を拡大した過程を比較宗教史の視点から解明することを目的としたものである。民間信仰と諸宗教の融合する実態を積極的に評価することで、媽祖崇拝が変容を重ねつつ朝鮮半島や日本の信仰世界に溶けこんでいく過程を文献研究と現地調査をもとに探求した。これによって、中国沿岸部の民間信仰から始まった守護女神の崇拝が道教の神々の系列に組み込まれて信仰圏を拡大させた足跡を明らかにすることができた。
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