研究課題/領域番号 |
17K02209
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本陽明学 |
研究実績の概要 |
本課題に関連して、研究代表者である永冨青地は、研究論文「佐藤一斎は朱子学者か―『欄外書』の記載より見たる」(『土田健次郎教授退職記念論集』、汲古書院、pp.279-295、2020年2月)を発表した。同論文は、従来、朱子学者、あるいは朱王折衷の学者として分類されることの多かった佐藤一斎について、彼の思想に関する一次資料である東京都立図書館河田文庫所蔵の自筆写本によって、彼の思想が明らかに陽明学よりのものであることを証明したものである。 同論文については、従来の刊本のみによる研究とはことなり、その思想をもっとも端的に表しうる写本によって結論を導き出した、実証的研究として、日本国内の儒学研究者のみならず、中国・台湾を中心とする海外の儒教研究者からも、日本儒学の多様性を示す論文として、高い評価を得ることができた。 特に、本論文によって、佐藤一斎の陽明学研究の水準の高さが中国の学会に紹介されたことによって、佐藤一斎の著作の影印本を、永富が編集を行う、中国・鳳凰出版社の、王陽明著作の影印叢書に収録することが決定された。 これは日本陽明学の水準の高さを広く国外に知らせる契機となりうるものであり、永富の本論文が、国際的な日本陽明学研究に具体的に寄与したことを証明しうるものである。 さらに、本論文が機縁となり、永富は、中国社会科学出版社より刊行予定の『王陽明大辞典』において、日本陽明学の部分を担当することを要請された。同辞典は、中国における陽明学の現在の研究水準を代表するものであり、そこにおいても、佐藤一斎を代表とする、日本陽明学を紹介することが可能となったのである。これは日本陽明学を中国の第一線の研究者に紹介する上での好機であり、研究史の上で、一定の意義を有するものと考える次第である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、日本および中国の各研究機関における資料調査・複写が前提とされているが、残念ながら新型コロナウイルスの蔓延のため、本年春以降において予定されていた 全ての資料調査は中断されたままである。 また、本研究の意義において説明したように、本研究の成果は、日本及び中国をはじめとする東アジア諸国において、学会発表のかたちで紹介する予定であったが、こちらも予定されていた学会の順延があいついでいるため、中断のやむなきに至っている。 本年度三月までの調査・分析は順調に進んでいたが、以上の理由により、本研究について、現時点ではおおむね順調に進展していると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
先ほど、現在までの進捗状況において説明したように、本研究においては、日本および中国の各研究機関における資料調査・複写が前提とされていたが、残念ながら新型コロナウイルスの蔓延のため、本年春以降において予定されていた全ての資料調査は中断されたままである。 従って、コロナウイルスの蔓延の終息後においては、何よりも先に、日本及び中国における資料調査を再開し、未収集の資料の収集に全力を挙げたい。 また、本研究の意義において説明したように、本研究の成果は、日本及び中国をはじめとする東アジア諸国において、学会発表のかたちで紹介する予定であったが、こちらも予定されていた学会の順延があいついでいるため、中断のやむなきに至っている。 そのため、目下、日本および海外の研究機関と連絡を取り、学会活動が再開された折には、特に陽明学および日本思想関係の学会において、研究発表に参加し、本研究の成果を順次発表していくこととしている
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においては、日本および中国の各研究機関における資料調査・複写が前提とされているが、残念ながら新型コロナウイルスの蔓延のため、本年春以降において予定されていた 全ての資料調査は中断されたままである。そのため、所蔵機関への旅費・複写費が必要とされる また、本研究の意義において説明したように、本研究の成果は、日本及び中国をはじめとする東アジア諸国において、学会発表のかたちで紹介する予定であったが、こちらも予定されていた学会の順延があいついでいるため、中断のやむなきに至っている。 そのため、学会参加のための交通費が必要とされる。
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