研究課題/領域番号 |
17K02210
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
山田 明広 奈良学園大学, 人間教育学部, 専任講師 (80511683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 道教 / 道教儀礼 / 台湾 / 台湾北部地域 / 淡水 / 烏頭道士 |
研究実績の概要 |
2018年度は、まず、台湾北部地域の烏頭道士の道教儀礼に関する先行研究を改めて探し出し、それらの読解・分析を行った。これにより、特に新北市淡水区(以下、「淡水地域」と称す)に分布する烏頭道士の師承関係や各道壇の関係性および彼らの儀礼実施状況が明らかとなった。このことは、同地域の烏頭道士の儀礼の伝承系統や歴史的変遷、台湾の他の地域の烏頭道士の儀礼との相違を解明する上で大きな手掛かりとなると考えられる。 次に、9月5日、2月27日および3月20~21日の三度に渡って淡水地域の烏頭道士の道教儀礼の現地調査を行った。一度目は混真壇による犒軍儀式と小規模な普度関連儀礼を、二度目は混真壇による祭解儀礼および混玄壇による収驚儀礼を、そして、三度目は混玄壇による功徳儀礼(死者救済儀礼)を調査した。いずれの儀礼も同地域のものとしては初見であったため、この三度に渡る調査により多くの新たな画像・映像資料を入手することができた。また、とりわけ、三度目の功徳儀礼の調査では、先行研究には見られない儀式の画像・映像資料を入手することができたほか、淡水地域の喪葬に関わる習俗についても見聞することができ、非常に有意義な調査となった。 このほか、二度目の調査の際には、道教儀礼の調査のみならず、混玄壇の張嘉霖道長に対して聞き取り調査も行い、淡水地域における烏頭道士の活動状況や烏頭道士と他の宗教職能者および周辺地域との関わり、淡水地域の人々の主たる原籍地、原籍地における信仰と淡水地域における信仰との相関性などといった、本研究の進展に大きく寄与しうるであろう事柄についても知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、現地調査の状況に関して、調査対象として、当初の予定では、新北市淡水区の烏頭道士の儀礼のほかに、新竹市および苗栗県の烏頭道士の儀礼、さらには、比較の便に供するため、台湾北部地域の紅頭道士の儀礼および釈教の香花和尚の儀礼なども予定していたが、現況、主として新北市淡水区の烏頭道士の儀礼を調査しているほか、台北市の釈教の香花和尚の儀礼をわずかに調査できている程度にとどまっている。また、目下主な調査対象となっている新北市淡水区の烏頭道士の儀礼についても、いまだ多くの新しいこと提示できるほど十分調査できていると言いうる状況にはなく、また、収集した資料についても、ほとんどが儀礼の様子を撮影した画像・映像資料で、科儀書や文書といった文字資料は、わずかに文書を撮影できた程度で、あまり収集できていない。 次に、収集した資料に関して、当初の予定では、儀礼の様子を撮影した画像・映像資料についてはすべて分類整理してDVDに編集するなど使いやすい状態にしておくはずであり、また、科儀書や儀礼文書といった文字資料については、すべてテキスト化しておくはずであったが、他の業務の影響等によりあまり進んでいない。 最後に、台湾北部地域の各道壇の系譜および原籍地の明確化に関して、新北市淡水区の烏頭道士の道壇についてはある程度進めることができたが、新竹市および苗栗県の烏頭道士の道壇については、そもそも儀礼の調査すらできていないように、未着手のままである。 以上の各点から、特に、当初調査することを予定していた道壇のうちのいくつかはいまだ調査できていないという点から、やや遅れていると評さざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」を踏まえ、今後の研究の推進方策として以下のようなものを考えている。 1、いまだ整理できていない画像・映像・文字資料は、本年度の早い段階で整理する。 2、いまだ調査ができていない新竹市および苗栗県の烏頭道士の道教儀礼については、まずは例年旧暦7月に行われる普度関連の儀礼の調査に赴き、その儀礼を執り行っている道士と直接話をすることで、今後、彼らの儀礼を調査させてもらえるよう交渉する。また、紅頭道士の儀礼および釈教の香花和尚の儀礼については、自身がこれまでに構築してきた人脈を活用して調査できるように努める。 3、淡水地域の烏頭道士の儀礼については、昨年度調査を行った混玄壇および混真壇とこれまで以上に密に連絡を取り、儀礼が行われる情報を可能な限り入手するとともに、可能な限り現地に赴いて調査を行い、儀礼の事例および資料の収集に努める。 4、儀礼の分析の際には、『道蔵』や『蔵外道書』などの歴史的儀礼文献を参照するなどして、儀礼の表面のみならず、その歴的変遷や内容的に深い部分まで理解するよう努める。 5、すでに交流のある道士とより親密な関係を構築し、科儀書や儀礼文書、族譜などの提供を受けられるよう尽力する。ただし、科儀書や儀礼文書は道士たちにとっては秘伝のものであり、うまく入手できない場合もある。その場合、『荘林続道蔵』などすでに刊行されている現代の儀礼関連の文献との比較により多くの時間を割くようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、所属機関にて行った特別聴講生に対する論文指導業務において予期していた以上に時間が必要となり、当初予定していたほど調査に時間を避くことができなかったためである。また、そもそも本研究が研究対象としてしている儀礼が実施される機会がそれほど多くなく、儀礼の実施時期と研究者が稼働できる時間とがうまく噛み合わなかったことも関係している。 本助成金は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、道教関連分野の図書を購入するのに使用する予定である。
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