研究課題/領域番号 |
17K02210
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
山田 明広 奈良学園大学, 人間教育学部, 専任講師 (80511683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 道教 / 道教儀礼 / 烏頭道士 / 台湾 / 台湾北部地域 / 淡水 / 新竹 / 苗栗 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、まず、前年度に入手した台湾北部地域の烏頭道士の道教儀礼に関する画像・映像資料および筆記資料の整理を行い、すでに何が調査できており、今後更に何の調査をすべきであるのか確認した。この作業により、淡水地域の烏頭道士の祭解儀礼、犒軍儀礼、普度儀礼、功徳儀礼については、不明な点は多いものの調査ずみであること、また、淡水地域の烏頭道士の建(酉焦)および同地域の釈教の功徳儀礼、さらには新竹・苗栗地域の烏頭道士の道教儀礼は調査できておらず、早急に調査すべきことが判明した。 次に、8月17日~8月18日、3月6日の二度に渡り淡水地域の烏頭道士の道教儀礼の調査を行った。一度目は、混玄壇による出殯の際の功徳儀礼の調査を行い、これまで未見であった科儀をいくつか撮影することができた。また、二度目は混真壇の祭解儀礼の調査を行ったが、同儀礼のほぼ全過程を撮影することができたほか、同儀礼において使用される疏文をも撮影することもできた。いずれの調査においても、これまで未入手だった資料を手に入れることができ、大きな収穫となった。 次に、8月22日には新竹市の烏頭道士による普度法会の調査を行った。本法会では、無縁死者救済のための科儀だけでなく、先祖や水子の追善供養の科儀も含まれており、新竹市の烏頭道士が行う多くの種類の科儀を調査することができた。 このほか、2月24日には混玄壇の張嘉霖道長に対して聞き取り調査を行い、これまで調査した同道長による儀礼についての疑問点のいくつかが解決できた。また、3月6日には真理大学准教授・蕭進銘氏を訪問し、台湾北部地域の烏頭道士の道教儀礼に関する情報および氏がかつて調査した画像・映像資料の提供を受けた。これにより、儀礼を行う際に使用する科儀書や文書といった極めて入所困難なものに関する画像資料を入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況を「やや遅れている」と判断したのは以下の理由による。 1、新竹市および苗栗県の烏頭道士の儀礼については、いまだに毎年行われる法会1例しか調査できておらず、また、聞き取り調査を行うことのできる同地域の道壇が見つかっていない。 2、本研究課題では、比較の便に供するため、台湾北部地域の釈教の香花和尚の儀礼をも調査の対象としているが、これもいまだに毎年行われる法会1例しか調査できておらず、また、聞き取り調査を行うことのできる壇も見つかっていない。 3、収集した資料のうち、科儀書や儀礼文書に関する画像資料のテキスト化ついては、他の業務の影響により、あまり進められいない。特に、科儀書については、そもそも平成30年度末にようやく入手できたこともあり、ほとんど進められていない。 4、台湾北部地域の各道壇の系譜および原籍地の明確化に関して、新竹市および苗栗県の烏頭道士の道壇については、そもそも聞き取り調査を行うことのできる道壇がみつかっておらず、ほぼ未着手の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」を踏まえ、今後の研究の推進方策として以下のようなものを考えている。 1、いまだ整理できていない画像・映像・文字資料は、本年度の早い段階で整理する。特に、平成30年度末に入手できた科儀書については、早急にテキスト化を進める。 2、新竹市および苗栗県の烏頭道士の道壇および台湾北部地域の釈教の壇については、知人に依頼して紹介を受け、儀礼の調査ができるように努める。 3、淡水地域の烏頭道士の儀礼については、入手した科儀書等をもとに儀礼内容の分析を進め、より深いところまで理解するよう努める。 4、儀礼の分析の際には、『道蔵』や『蔵外道書』などの歴史的儀礼文献を参照するなどして、儀礼の表面のみならず、その歴的変遷や内容的に深い部分まで理解するよう努める。 5、できる限り科儀書や儀礼文書、族譜などが入手できるよう尽力する。うまく入手できない場合は、『荘林続道蔵』などすでに刊行されている現代の儀礼関連の文献の内容と比較するなどして対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、所属機関における身分が当該年度より特任講師から専任講師へと変わり、校務の数と種類が増え、校務に予期していた以上に時間が必要となり、さらに、当該年度より慶應義塾大学東アジア研究所の研究員(非常勤)をも兼任し、そこでの研究課題を遂行するのにもにもかなりの時間を要し、当初予定していたほど調査や研究に時間を避くことができなかったためである。また、そもそも本研究が研究対象としてしている儀礼が実施される機会がそれほど多くなく、儀礼の実施時期と研究者が稼働できる時間とがうまく噛み合わなかったことも関係している。 生じた次年度使用額は、iPad mini5および関連物品の購入および道教関連の図書の購入に充てる予定である。
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