本研究では、懐徳堂学派の儒学思想を分析して、中井竹山・中井履軒兄弟が活動していた時期に懐徳堂学派が「実学」―現実の政治実践に資する学問―の概念を提出したことを明らかにしている。懐徳堂の実学概念は、幕末期に至って当時の儒学思想に大きな影響を与えた。すなわち、懐徳堂の儒学思想は、抽象的な実学を真の実学に昇華した。このような「実学」としての儒学の概念を提出したことが日本近世儒学思想史上における懐徳堂学派の思想史的意義である点を明らかにした。それによって、本来、儒学が現実にかかわる学問であることが明確になり、その儒学の本質を知ることで現代の我々もより深く現実にかかわるべき存在であることが認識された。
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