従来仏教史の中で瑜伽行唯識思想の歴史的成立過程などが玄奘の『大唐西域記』など中国の報告書や中国唯識教学・日本法相教学の伝える伝承によって描写されてきた。しかし、新たなサンスクリット語写本の発見も手伝い、再度サンスクリット語原典を注意深く吟味する中で、これまでの考え方が通用しなくなってきていた。本研究ではその中から安慧を取り上げた。従来、註釈家スティラマティとヴァラビーのスティラマティ、その漢訳「堅慧」「安慧」が同一人物とされてきたが、原典を吟味した結果、それぞれ別人であることを解明した。従来の仏教史を根本から書き直す証拠を提示した。
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