2020年度は、コロナ感染拡大により2019年度に予定されていた研究会の延期等により、研究期間を延長して以下の研究を行った。 1 パツァプ・ニマタク著『根本中論般若釈』第1章に引かれる諸学説のソースとその伝承過程の検証。 2 シャーンタラクシタ、カマラシーラの影響の確認。 3 帰謬論証の応用 今年度も研究会等の開催は中止されたが、これらの知見についてはヴァージニア大学のヴォス教授と意見交換し、1のソースについてシャーンタラクシタの『真理綱要』とカマラシーラのその注釈にあることを確認できた。また、パツァプが批判的に論じる非仏教、仏教の諸学説について、"The Negation of Arising from Other in the Mulamadhyamakakarika and Beyond" という論文の中で紹介し、その内容を論じた。本論文はハンブルク大学より出版されるインド学仏教学論文集に掲載が決まっている。そこでは比較対象として、パツァプの弟子であるシャン・タンサクパの『中観明句論釈』も扱い、帰謬論証の発展を跡付けることができた。
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