研究課題/領域番号 |
17K02215
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
高島 淳 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (40202147)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 仏教の終焉 / 南インド / 上座部 / 密教 / 図像学 / 碑文 / 植民地期文献 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南インドのタミル・ナード州の一部地域という限定された領域ではありながら、多数の仏像の出土と少数の碑文などから 16 世紀に至るまでの仏教の残存が確認されているという事実に基づいて、未解明のままであった南インドの終焉期仏教の様相を、出土遺物、碑文、ヨーロッパ植民者等の文献、といった多方面の資料を総合的に用いることによって可能な限り明らかにすることによって、インドにおける仏教の終焉の様相と原因を解明することである。 初年度である2017年度の前半においては、オランダ植民地期文献の検討などによるナーガパッティナムの仏教遺物の残存状況の推定によって「中国パゴダ」と言われていたものが仏塔ではなかったであろうことや上座部を基本とする信仰と観音を中心とした大乗の仏との習合した姿が想定されることなどを指摘する研究発表を宗教学会において行なった。 年度の後半においては、海外調査を2回行なった。寺院あるいは野外に現存する石仏の調査としては、第一回目にカーンチプラム市内および周辺の4カ所、第2回目に主にカーヴェリ河デルタ地帯を中心とする17カ所を調査して石仏の撮影と、その所在地のgpsデータによる位置情報の特定を行なった。ブロンズ仏像に関しては、チェンナイ博物館のブロンズ・ギャラリーの半分が改修工事中でごく一部しか撮影できないという計画外の事態があったが、マンガロールのマンジュナータ寺院のものについては良好な写真撮影を行なうことができた。このような現地調査によって、従来の研究では不充分であった現地のロケーション観察を行なうことができ、往時の状況についての仮説をたてることが可能となった。野外の石仏のGPSロケーションデータの整備は今後の研究を進める基本的条件であって、これによって他の研究者も研究に参入できるようになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の調査計画の柱であるタミルナード州の野外石仏等の調査においては想定以上に順調に調査を行なうことができた。ブロンズ仏像の調査については、チェンナイ博物館などの改修による閉館のため当初の予定と比較すると不充分なものに留まっているものの、マンガロールのマンジュナータ寺院のブロンズ仏像の撮影を実施することができたことなど当初予定になかった調査も行なうことができたことなど全体としてみれば順調に調査と研究を行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において当初計画通りには充分に行ない得なかったチェンナイ博物館のブロンズ仏像の調査および、13世紀において南インドと密接な関係を有していたことが碑文からわかる旧パトナ博物館所藏で現在改組によってビハール博物館へ移行されつつある仏像の調査については、第2年度に補充して調査を行なう予定である。さらに、スリランカにおける大乗仏教遺物についても調査を行なって、上座部と大乗の習合の様相を解明する。また植民地期文献資料の調査研究なども引き続いて推進していく。初年度に行なった調査の結果について研究協力者達と検討を加えて宗教学会などで成果を随時発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたパトナ博物館の調査が、ビハール博物館への改組という事情で実行できなくなったため調査期間を短縮したために使用経費の減額が生じた。これについては2018年度の後半において調査を実施して使用する予定である。
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