インドにおける終焉期の仏教について、南インドのタミル・ナード州のカーヴェリ河デルタ地帯を中心とする地域において13世紀までは仏教の活動は十分に盛んであったこと、弱まりながらも最後は16世紀まで存続したことを明らかにした。さらに、その仏教の僧院としてのあり方は上座部と考えられる一方、在俗の信徒の信仰には大乗的な観音や弥勒の信仰が強かったが、密教の要素はそれほど見られないことが認められる。このような仏教のあり方から、在俗信徒のあり方を僧の規範と一致させることができなかったことにより、僧の再生産のシステムをうまく構築できず、僧院組織を維持できずに仏教の終焉に至ったものと考えられる。
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