サンスクリット(梵語)文学史の中での一つの独立したジャンルとして、インド文化圏の仏教徒による2千年の梵語作品の文学史が学問的に構築されなければならない。しかし現時点ではその文芸史の構築はまだ困難であるといわねばならない。なぜなら仏教梵文学の領域の諸研究の分布は、2千年にわたる文芸の歴史の全体を十分に俯瞰するには、まだむらがありすぎるし、特に中期以降が不十分すぎるからである。全体的にバランスのとれた仏教文芸史の俯瞰・構築のためには、いま早急に取り組まねばならない二つの課題があり、それは、一には、インドの成熟期の仏教詩人たちの作品の研究、二には、インド外、特にネパール仏教の梵文学の研究である。
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