研究課題/領域番号 |
17K02220
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
清水 洋平 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (50387974)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 上座部仏教 / 東南アジア仏教 / タイ仏教 / 貝葉写本 / パーリ語文献 / 積徳行 / アーニサンサ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、16~19世紀の東南アジア大陸部:特にタイで発展し、独自に編纂された積徳行という宗教的実践を勧奨する文献:アーニサンサを考察し、①ほとんど知られていなかった同文献群の全体像を把握すると共に、②伝統的パーリ仏典(正典としてのパーリ三蔵及びその註釈文献)と対比・校合しアーニサンサ文献のパーリ仏典史上における変遷・発展の体系的解明を行うことである。その中で、令和3年度の研究実績は以下の通りである。 (1) 現在までに整理し構築したアーニサンサ(積徳行)文献(貝葉写本)グループ(約35種230束:1束は約24葉)のデータベースを活用して、本年度は、タイ仏教の特徴的な現実相との対応が明らかな本研究に適する代表テクストとして『スヴァンナタンバ・アーニサンサ』を選定した。コーム文字(主としてパーリ語を記述するために使用された初期クメール文字)で記された同写本文献について、ローマ字に転写する作業を行い、パーリ語から日本語への翻訳作業を実施した。 (2) 構築したアーニサンサ文献のデータベースを精査した結果、それらの中には、前年度までに代表テクストとして取り上げた『サッバダーナ・アーニサンサ』と題名が付される大部な集成文献以外に、『スッタジャータカニダーナ・アーニサンサ』と題名が付される、数多くのアーニサンサ文献をまとめたさらに大部な集成文献が存在することが判明した。 (3) 『スッタジャータカニダーナ・アーニサンサ』については、手持ち資料に未収集束が複数あり、全体像を捉えることができなかった。同文献の未収集束については、前年度までの現地調査でタイ国立図書館に所蔵されていることが判明していた。そこで、現地在住の研究協力者の協力を得てそれらの資料収集に努め、同図書館から未収集束をデジタル画像として入手することに成功した。これにより、同写本文献の全体像を捉えることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、アーニサンサ文献の中から代表テクストを幾つか選定した上で、そのテクストのローマ字転写、校訂、訳出と内容研究を主とする文献研究面と、タイや欧州の図書館所蔵の関連する貝葉写本の調査・収集・比較検証を行う資料面の二つのアプローチをとる。文献研究面では、コーム文字タイ語で記された難解な文献資料が予想より多く存在していたことから、その読解作業に遅れが生じた。資料面については、大英図書館での関連資料調査も計画していたが、COVID-19の影響により、渡航が難しく、実現させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究面については、国内の研究協力者と定期的に行う意見交換・研究会を継続し、読解作業を進める。コーム文字タイ語で記された難解な文献資料については、同様文献の読解に精通している現地研究者(研究協力者)と共に、読解作業にあたる。 資料面については、COVID-19の影響が緩和し渡航規制がなくなれば、イギリス(大英図書館)に渡航し資料面の充実をさらに図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由):上述のように、文献研究面では、コーム文字タイ語で記された難解な文献資料の読解作業に遅れが生じたこと、資料面については、本年度に実施する計画であった大英図書館が所蔵する関連資料の調査が実施できなかったことによる。 (使用計画):研究協力者の協力を得ながら、難解な文献資料の読解作業のスピードアップを図る。また、大英図書館での関連資料の調査を行う予定である。
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