研究課題/領域番号 |
17K02226
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川村 邦光 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (30214696)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 早世者 / 弔い / 遺影 / 未成霊 / 宗教文化史 / 宗教学 |
研究実績の概要 |
・4月29日:第1回研究会、打ち合わせ及び発表:川村「早世者と遺念余執」(大阪大学・日本学研究室);9月23日:第2回研究会、兵頭晶子「「生きている」ということを取り戻す」;鎌倉祥太郎「津村喬と『月刊焼酎通信』」;湯天軼「「二次元世界」の活動空間」;前田勇樹「「琉球処分」と天然痘」;熊華磊「地域社会における桜の花見の展開」(大阪大学・全学教育推進機構総合棟Ⅰ);12月23日:第3回研究会、大阪大学・日本学研究室:発表:鎌倉祥太郎「死者の語りと社会運動:山﨑博昭と第一次羽田闘争」;川村「〝わが解体〟の途上にて:高橋和巳と弔いの語り」(大阪大学・日本学研究室)。 ・研究推進のため、Nayoung Aimee Kwon, Intimate Empire の読書会の開催。6月18日、8月6日、9月30日、11月25日、1月27日、3月3日、8回行なった(大阪大学・日本学研究室)。 ・11月4日、福井県立若狭歴史博物館で竹原明理(熊本博物館学芸員)の講演「家庭でつくるミニ・デジタルアーカイブのすすめ―熊本自身の経験から」を聴講。若狭地方の地蔵盆習俗に関して、若狭歴史博物館学芸員・石山祥子と意見交換。5日、地蔵祭祀・寺院の調査。 ・12月6日、会津若松の白虎隊記念館・宇賀神社で戊辰戦争・白虎隊に関して調査。7日、南会津町の慈恩寺にある西軍(官軍)墓地の調査。会津若松で会津藩士などの東軍(賊軍)の墓地のある阿弥陀寺・長命寺・天寧寺の調査、福島県立博物館の見学。 ・業績:『日本民俗文化学講義:民衆の近代とは』河出書房新社、2018年[pp.1-267];「弔いめぐる語り」『文化/批評』春季臨時増刊号、国際日本学研究会、2018年[pp.3-59]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・本研究の目的は、早世者の死と弔いに関して、宗教文化史的・比較宗教学的な研究を通じて明らかにすることである。第一に、早世者の死や死霊の解釈に関する歴史的な変化を明かにすることである。第二に、早世者の弔いの作法(葬法や墓石・墓地、供養・鎮魂法、遺影、記念物)を調査し、その歴史的変遷を明らかにすることである。第三に、早世者を追悼する記録や作品における言説を比較し、歴史的な変遷を考察することである。そして、早世者の弔いの現状を踏まえて、早世者と関わる遺族など、また社会に向けて提言することを目的としている。 ・今年度は、戊辰戦争150周年を翌年に控えて、福島県会津若松市・南会津町の戊辰戦争での東軍(賊軍)と西軍(官軍)墓地・寺院また神社を訪れ、戦死者の墓地、その保存・維持、追悼儀礼などについて調査した。賊軍の地である会津地方には、西軍(官軍)墓地がいくつかあり、丁重に墓石が保存・維持され、関係する遺族や地域との交流があることを少ないながらも確認することができた。それは『日本民俗文化学講義』や「弔いめぐる語り」の中に反映させることができ、研究課題を推進できた。会津地方の西軍(官軍)墓地の関係者の調査は今後の課題として追究していく。 ・以上のように、研究計画を進めることができ、おおむね順調に研究を進展させていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
・前年度の戊辰戦争との関連で、会津地方の調査を継続するとともに、山口県の西軍(官軍)墓地の調査を行い、近代日本の戦死者祭祀の原型を追悼・顕彰また供養の習俗から探る。また、東日本大震災での死者を戦死者と同様に、非業の死という視点から捉え、岩手県・宮城県の被災地を訪ね、死者の弔いの作法(葬法や墓石・墓地、供養・鎮魂法、遺影、記念物)を聴き取りも行い調査する。特に、少なからず早世者を文学のテーマにし、明治期の三陸大海嘯の記憶を継承していると考えられる、早世者である宮沢賢治に関する調査も並行して行う。 ・今年度も、これまでの調査・研究を踏まえて、少なくとも3回ほどの研究会を開催し、ゲストを招き、本研究の深化、また研究計画の進展を図りたい。7月、11月、2月を予定している。また、研究を深化させるために、昨年度に引き続いて、Nayoung Aimee Kwon, Intimate Empire の読書会を行う。 ・これまで研究を進めてきた、1960年代後半から70年代前半にかけての早世者に関する研究をまとめて、本研究の中間報告書として刊行することを目指す。
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