研究課題/領域番号 |
17K02229
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中里 巧 東洋大学, 文学部, 教授 (40277348)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キリスト教神秘主義 / 復讐 / 和解 / マザーテレサ / 砂漠の父祖 / darkness / T.Merton / J.Chapman |
研究実績の概要 |
研究主題は、「北欧北方宗教哲学における葛藤の原理-復讐・無垢・共生の精神史的ダイナミズム」であり、2018年度は、「共生と無垢」というテーマで研究推敲した。 本研究は、1.北欧北方における「復讐」についてその解決不可能性の基底を解明し、2.「共生」について北欧北方における社会体制の基底を考察し、さらに、3.「無垢」という概念を用いて、「復讐」と「共生」を媒介する思想的境位をさぐるとともに、4.北欧北方における血の復讐を解消する大きな要素としてキリスト教正教宣教を取り上げて、葛藤の原理や血の復讐解消の理論的解明をおこなうものである。2018年度は、研究推敲の過程で、血の復讐解消の理論的解明にとって重大なヒントなる事象として、キリスト教正教(一部カトリックを含む)の神秘主義思想とりわけ砂漠の父祖・イエスの祈り、およびこれと関連して、地域は異なるがマザーテレサのキリスト観(I thirst, I quench)、神秘主義思想におけるDarknessの要素、さらに、これらの解明に役立つと思われるT.MertonやJ.Chapmanの文献を重要性を明らかにするにいたった。こうした作業との関連で、学会で口頭発表するとともに、学術雑誌に論文を発表した。また、黒姫童話館においてM.エンデのマニュスクリプトをとおして、無垢についての思想内容を精査するとともに、共生のデータベース化作業をおこなった。 なお「無垢」という概念を媒介として「復讐」と「共生」をつなげる構想であるが、トリックスターやインナーチャイルドにかかわる「無垢」概念は、その神話性や文学性のゆえに、北欧北方という地理的概念を超えていくものであることも明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を推敲していく過程で、キリスト教神秘主義・砂漠の父祖・正教(マザーテレサなど一部カトリックを含む)聖人伝における思想的特徴をさらに仔細に調べる必要が生じた。こうしたこととの関連で、北欧北方少数民族文化を含む共生のデータベース化作業などに、遅れが生じている。しかし、先に記したように、北欧北方の復讐譚などにおける血の復讐の解消について、大きなヒントを得て研究遂行上きわめて太い論理的道筋がついたので、今後の作業においてこの遅れは十分解消できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、「復讐と共生と無垢」というテーマで研究を推敲していく。主な作業としては、共生のデータベース化作業の継続・黒姫童話館における継続調査・北海道立北方民族博物館における調査(少数民族とキリスト教の関係)・復讐と共生と無垢について、所与の資料の比較検討・キリスト教神秘主義のキリスト観や神秘神学およびcontemplative prayerと呪術の違いなどについて、研究を推敲していく。これに伴い、学会口頭発表や学術誌における論文発表公開講座等の開催をおこなう。
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