研究課題/領域番号 |
17K02232
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
一色 哲 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (70299056)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南島キリスト教史 / 沖縄キリスト聯盟 / 平和をつくる沖縄キリスト者の会 |
研究実績の概要 |
まず、これまでの研究の成果として、2018年5月、『南島キリスト教史入門─奄美・沖縄・宮古・八重山の近代と福音主義信仰の交流と越境─』を新教出版社から出版した。これは、主として近代以降、沖縄戦までの南島地域のキリスト教伝道の展開と、その信仰の特徴としての福音主義信仰が深く浸潤していった実態を解明したものである。 また、2018年度は、上記拙著に引き続き、沖縄戦以降、米軍占領下におけるキリスト教の伝道とその役割について研究書を出版するための準備期間であった。そのため、2018年9月と12月の2回、沖縄島で文献調査と聞き取りを行った。9月の調査では、「沖縄キリスト教平和総合研究所連続講座Ⅶ」の第2回講座(於沖縄キリスト教学院・シャローム会館)で「沖縄・宮古・八重山における軍事占領と教会─1940年代後半における地域教会とキリスト教─」と題して講演を行った。それから、この講演の前に同研究所の関係者と今後の研究についての協議を行った。そのなかで、2019年度に沖縄キリスト教平和総合研究所の客員研究員への就任を打診され、了承した。これにより、2019年度以降、いっそうの研究の進展が見込まれる。 また、沖縄県公文書館の職員や自治体史に関わっている研究者で構成された「史料学研究会」(於沖縄県立芸術大学附属図書・芸術資料館多目的室)に出席して、琉球・沖縄史を対象とする民族学や歴史学の研究者と交流し、情報交換を行った。コノの他、報告者は、本科研のほか、「戦後日本の宗教者平和運動のトランスナショナル・ヒストリー研究」(基盤研究(B)、研究代表者・大谷栄一佛教大学教授、2016~2018年、課題番号[16H03357])にも研究分担者として参加している。この科研の調査・研究の成果から、本科研での米軍占領下の平和運動への南島内外の平和運動とのネットワークについての見識を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、学会発表は行わなかったが、現地開催の一般向けの講演会で発表をする機会を与えられた。その場に当該研究に関わる関係者等が多数おられたため、それらの方々を対象に報告者の研究を広く周知することができた。また、それらの方々から情報や知識などが提供された。そのことにより、これまでの研究に広がりや深みを加えることができた。 同様のことが、拙著『南島キリスト教史入門─奄美・沖縄・宮古・八重山の近代と福音主義信仰の交流と越境─』(新教出版社)の公刊についても言える。本書については、『図書新聞』や『西日本新聞』、『信濃毎日新聞』等非キリスト教系一般紙に書評が掲載された。このことにより、キリスト教に関心がある層だけではなく、沖縄研究(歴史学・社会学・民族学・人類学・宗教学等々)に関心がある層にもある程度報告者の研究が周知されたので、今後も情報提供などが得られやすくなった。 また、沖縄では沖縄県立図書館がリニューアルし、史料へのアクセスがより充実している。また、沖縄キリスト教平和総合研究所とその設置団体である沖縄キリスト教学院大学では、研究所、および、同大学図書館の関係者と良好な協力関係を築くことができ、当該研究の「ゲート・キーパー」の役割を担って頂いている。そのことにより、史料調査や聞き取り調査に対する斡旋や有益なアドバイスを頂き、これまでの研究の確認などがスムーズにできるようになった。このように、研究の基盤がより確固としたものとなっている。 この他、他地域のキリスト教史研究者や、他分野(他宗教)の研究者との交流を通じて、より広い視野で研究を展開することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、本研究の中間年に当たるため、以下の課題を設定して、研究を進めたいと考えている。 まず、これまで懸案となっている南島地域のキリスト教会・団体等の悉皆調査を行い、南島キリスト教伝道の全体像を把握したいと考えている。調査の内容は、①教会の正式名称、②所属教派(含単立教会)、③設立の年月日とその経緯、設立時の伝道者・宣教師・信徒等、④現在の信徒数(現住陪餐、非陪餐会員、求道者等)と年間授洗者数、⑤現在の伝道者の氏名・人数・経歴(出身神学校・主任担任経験等)、⑥その他(教会の特徴、地域連携等)の点である。 また、当該年度中にこれまでの研究成果をふまえて、戦後米軍占領下(沖縄戦終盤~1970年代前半)の南島キリスト教史について、沖縄・宮古・八重山の各群島を中心に専門書を出版したいと考えている。報告者はこれまでに、当該研究について充分な蓄積がある。それを踏まえて、当該年度では、南島の現地で、これまでの史料調査・聞き取り調査の整理と確認を行い、それらをまとめる作業を行う。 以上のことを通して、これからの1年間は、これまでの研究の中間的総括をし、後半に向けて、新しい課題の設定を行いたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、まず、前半で、これまでの研究のまとめとして単著の出版を優先させたため、物品費・旅費・人件費・その他の支出がなかった。また、後半部分では、これからの研究成果の公表(単著の出版)に向けての準備のため、研究対象関係者との打合せと、資料の整理・確認に集中したため、旅費のみの支出となった。 翌年度については、研究成果の公表と並んで、新たな課題を設定し、資料等の購入や悉皆調査のための費用を使用する計画である。
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