当該年度は研究の最終年度にあたり、基本的にこれまでの調査結果の集約を行った。ただ、最終年度の終わりに計画をしていたいくつかの国内ならびに国外の出張が、新型コロナウィルス感染拡大に伴ってキャンセルせざるをえなくなり、主に国内の医療機関に対する調査が手薄となる結果となったことは残念であった。 しかしながら、研究代表者である関谷は通年で日本バプテスト病院に本学博士課程前期の学生を連れて病院を訪問しており、その都度「非構造的」な形式で病院チャプレンである宮川由美子牧師との面談を続けてきた。そこで得た成果は国内における多文化・多宗教環境における病院施設での霊的ケアのありようを検討する上で重要なものとなった。 残念ながら、全体としては当初予定していた「基礎モデル」を具体的な形で提言するまでには至らなかったものの、1年目と2年目に行ったハワイの病院に所属するチャプレンに対するインタビューや、関連施設の訪問、スーパーバイザー、ならびにCPE(Clinical Pastoral Education)の受講者をはじめとする、様々なスタッフとの面接などで得られた基礎的な知見を、この年度、国内のチャプレンとの複数回にわたる対話と照会する形で実施した、分担研究者である木谷佳楠との検討会議によって、日本の病院施設に対する提言をまとめるための基盤づくりに至ることができた。 ただ、今回の研究の中心的な方法論としてあげていたグランデッドセオリーを調査結果の分析に適用するという点においては、当初分担研究者の健康問題もあり、残念ながらそれをフルに活用して、インタビューを行ったチャプレンのインタビューを、研究計画の中で目指したような「客観性のある分析」に醸成するというところには届かなかったうらみはある。当該年度は結果的には全体の調査結果の集約と同時に、この方法論のこうした分野への適用を検証することに時間を割いた。
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