研究実績の概要 |
当該年度は、国際学会(74th General Meeting of Studiorum Novi Testamenti Societas 於 Marburg)へ出席し、有益な情報交換を行うことができた。 その成果をもとに、当初の計画に基づき、また、前年度の研究実績を踏まえ、研究発表の準備を進めたが、新型コロナウイルス感染症に伴う学会の延期のため、予定していた研究発表を行うことはできなかった。一方で、計画していた研究内容そのものにおいては、大きな進展があった。 中でも、初期に成立した使徒教父文書のうち、第一クレメンスについては、本文の精査および二次文献との批判的対話から、マタイ福音書引用の可能性は低いことを結論づけた。 また、「イグナティオスの手紙」におけるマタイ福音書引用に関する考察については、同様の研究プロセスから、本研究の目的における主たる関心事である「キリスト教」の成立事情の解明につながる有益な知見が得られ、とくにfiscus Judaicus(ユダヤ金庫)をめぐる社会状況の再構成に基づく説明モデルを構築することができた。なお、これらの研究成果については、2020年9月以降に延期された日本聖書学研究所の例会(当初2020年3月に予定され、発表を計画していた)において研究発表の機会を約束されている。 また、昨年度の研究成果の一端である論文は、William Loader, Boris Repschinski, Eric Wong(eds.), Matthew, Paul, and Others: Asian Perspectives on New Testament Themes, innsbruck university press, 2019に収録ならびに刊行された。
|