研究課題/領域番号 |
17K02243
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研究機関 | 鈴鹿大学 |
研究代表者 |
川又 俊則 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (40425377)
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研究分担者 |
郭 育仁 鈴鹿大学, 国際人間科学部, 准教授 (10761603)
小林 奈央子 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (50597135)
冬月 律 麗澤大学, 外国語学部, 講師 (70726950)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 次世代 / 継承 / 教化 / 超宗派 / 子ども会 / 青年会 |
研究実績の概要 |
個別研究を集約すると次の通りである。 まず、川又は、近江八幡仏教会の花祭りに参加し、地域社会と超宗派仏教の深い関係を実感した。亀山若手僧侶の会SANGA主催イベントにも参加し、地域社会と死・医療・宗教のかかわりを学んだ。大本山で修行する青年僧侶の様子などもとらえた。共同牧会を続けるキリスト教会で牧師・信者インタビューなどを続け、地域の特性と同時に、教化方法や一般社会とのかかわりを考察した。 次に、小林は、愛知県内の御嶽講の祭礼および登拝の調査のほか、尾州鷹羽講と代参先の静岡県袋井市可睡斎を調査した。また、可睡斎で紹介して頂いた同県磐田市の松之木島大膳講や周智郡森町内に所在する御嶽講の調査をおこなった。静岡の御嶽講では、火渡り行事が盛んに行われ、火渡りを通して人々が地域と関わり、地域の人々が講を継承していくという特色がみられた。地域を静岡まで広げて調査できたことが2019年度の大きな成果であった。 さらに、冬月は、神社界における次世代教化活動に関する資料、とりわけ神社界唯一の業界紙である『神社新報』をはじめ都道府県の各神社庁の機関誌などを創刊号から収集し、地域社会における神職の活動内容・形態の把握と分析を進めた。また、高知県や京都府で次世代を巻き込んだ地域活性化、伝統文化体験活動に取り組んでいる神職を対象に聞き取り調査を行い、今後地域神社の存続意義や求められる役割などについて考察した。 また、郭は、京都市右京区嵯峨嵐山地区の嵯峨祭(野宮神社・愛宕神社)から世代交代(行事役職→現場責任者→担ぎ手・青少年参加者)が行われるなかで、末端の担い手が著しく減少したことを考察した。他方、秋葉山本宮秋葉神社のこども参宮団の取り組みから、「神主は森の中で待っていたらダメ」というキーパーソンの思いは、多くの地域活動のイノベーターに通底し、関係者らの共感が得られる部分が多いことを再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年計画の3年目として共同研究も個別調査もほぼ順調に進められた。毎年度実施してきた「次世代教化」に関する歴史、宗教、地域社会、社会教育などの基礎的データの収集、現況調査は今年度も継続した。とくに、仏教界・キリスト教界・神道界などの最新情報は業界関連紙誌やウェブサイトで確認し、関連研究等を含めた文献調査・個別情報収集も行った。共同調査・研究会を1度行った(2度目を3月に予定も新型コロナウイルスの広がりで次年度へ変更)。研究会では各人のこれまでの調査研究の報告、今後の計画、次年度の学会発表などを検討した。 とくに共同調査としては、8月13日に「静岡県神道青年会による次世代を対象にした活動の現状と課題関係」の共同調査を実施した。県神社庁関係者に「こども参宮団」の歴史と現況についてうかがい、導入した県神社庁副庁長・秋葉山本宮秋葉神社宮司からは、導入理由(幼い頃に神宮に触れることが、後の信仰にとって大事だと思ったことなど)、その後の継続について後輩達への感謝の思いなどをうかがった。県神社庁参事からは、現在の日程・内容の詳細、他県の導入例などを伺った。第1回目の参加者で現在の会長・神道青年全国協議会理事からは、こども参宮団経験者がその後神社につながっていく例、数回参加したこどもが成長している姿等を具体的に紹介いただいた。次世代へ信仰をつなぐためには、数年ではなく、十数年、数十年での実施が大事であると確認した。 3月にも共同調査を計画していたが、新型コロナウイルスの広がりを勘案して次年度へ繰り延べた。2,3月予定の個別調査も一部次年度へ変更した。この部分は残念であるが、全世界規模での課題でもあり、やむを得ない。2020年度は最終年度となるが、これまでの成果をどのように公表していくかを代表者・分担者共に検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も当初の予定通り進める。個々の調査研究も総括年度になるため、これまでのまとめをそれぞれに行い、研究会での報告および、パネル発表や報告書でのまとめ方を考える。共同調査は名古屋及び金沢(もしくは福井等)を予定。また、次世代教化(地域・教育)に関して外部識者を招いた研究会を行う。ただし、新型コロナウイルス感染症の広がりにともない、7月くらいまでは調査ができないことを想定し、その期間はこれまで3年間の調査を振り返り、暫定的なまとめをしていくことにした。 今年度までに「次世代教化」として、若手宗教者が所属法人などでの個別活動のみならず、教団若手組織における活動や、超宗派的な組織による活動が全国各地で存在すること、活動によっては数十年単位で継続していることなどを確認した。次世代教化にかかわる活動は地域性や宗教者の能力によって格差が生じやすく、類型化することは難しいため、今後も継続調査の必要性がある。現状課題の解決に宗教関係者らの思いに着目しつつ、今後の見通しなどを含めた議論をしていきたい。 3年間の中間報告的内容について、秋の日本宗教学会の学会大会にてパネル発表を計画している。そこでの質疑応答、及び今年度の調査研究を含めて、年度末までに報告書をまとめる。 このように、共同調査も個人調査もほぼ順調に推移している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2,3月に予定していた個別調査、共同調査・研究会を、新型コロナウイルス感染症拡大のため中止にせざるをえなかった。次年度夏期頃までに追加実施予定。 校務多忙な分担者が一部調査を次年度に延期した。次年度の調査にて使用する。
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