研究課題/領域番号 |
17K02246
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水溜 真由美 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00344531)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 知識人 / 教養 |
研究実績の概要 |
「堀田善衞における作家・芸術家の肖像(3)―ゴヤ」『北海道大学文学研究科紀要』152号、2017年7月、「堀田善衞における作家・芸術家の肖像(4)―モンテーニュ」『北海道大学文学研究科紀要』153号、2017年11月を発表した。これらの論考は、ゴヤの評伝『ゴヤ』とモンテーニュの評伝『ミシェル 城館の人』において、堀田が「乱世」を生きた実在の作家・芸術家を「乱世」を生きた自身の体験を重ね合わせつつ、どのように描いているのかを検討したものである。後者については、ファシズムが台頭した1930年代に、モンテーニュを含むユマニスム思想をめぐる関心が国際的に高まったことについても、併せて論じている。 次に、「堀田善衞『時間』―乱世を描く試み」『北海道大学文学研究科紀要』154号、2018年3月を発表した。同論考は、南京事件を素材とした堀田の長編小説『時間』について、中国人の知識人の日記として書かれた同作品が、「乱世」を描く思考実験的な作品であることを明らかにしたものである。堀田が、「乱世」における身の処し方によって人物を類型的に書き分けていることのほか、ヴェルコール『海の沈黙』からの影響や、シベリア出兵を主題とした堀田の長編小説『夜の森』との関係についても詳しく論じている。 なお、3つの論考のいずれにおいても、掘田が西洋の歴史・文化についての幅広い教養を生かしながら、「乱世」における知識人のあり方をユニークな観点から捉えていることを明らかにした。また、堀田が様々な作品において、「乱世」における知識人像を繰り返し描いていることの意味については、「乱世を生きる知識人像」『海流』第13号、2017年6月に、考えをまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
科研費の申請から交付が決定するまでの間に研究が順調に進んだため、現時点で、申請時の研究計画において想定していたペースを上回る成果が上がっている。この1年間については、全体として、大きなハプニングに遭遇することもなく、順調に研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、中国の国共内戦を描いた堀田の長編小説『歴史』について論文をまとめる予定である。 その後、堀田善衞研究にかかわる既発表の論文をまとめて著書を出版する。当初は、最終年度に研究成果をまとめる予定であったが、研究が想定していた以上に進展していること、またすでに単行本にまとめるだけの分量の成果が蓄積されていることから、このような判断に至った(研究費の前倒し申請済み)。 なお、この著書に収録される論考では、雑誌メディアなどを媒介とした同時代の知識人同士のネットワークについては十分に扱うことができない。この点については、論文の形で研究成果を発表できるように、準備を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に出張を行い、事前に旅費として必要な金額を正確に予測することが困難であった。今年度は旅費の支出額が予定額よりも多かったので、繰越金は次年度の旅費に繰り入れたい。
|