コロナで、十分な調査研究を行えなかったため、1年期間を延長した。前年度同様、現地調査は行えなかったが、すでに収集済の資料を基に調査を継続した。 その最大の成果は、玉水流に関して、伊藤聡編『寺院文献資料学の新展開 第十巻 神道資料の調査と研究Ⅰ 神道灌頂玉水流と西福寺』(臨川書店、2011年)を刊行できたことである。西福寺と高幡不動の玉水流の神道資料の目録と資料翻刻・解題、論考から成る本書において、報告者は論考・目録・翻刻解題の一部と全体の編集に携わった。本書によって、玉水流における神道灌頂の実態をある程度復元できた。 また、伊藤聡編『真福寺善本叢刊〈第三期〉神道篇3 御流神道』(臨川書店、2021年)も刊行した。この中では父母代灌頂とよばれる、御流神道の神道灌頂に関する資料の翻刻と解題を収めた。 その他、論文として「中世神道説と修験道・陰陽道との関係」(『現代思想』2021年5月増刊号)、「三輪流神道の形成」(伊東貴之編『東アジアの王権と秩序――思想・宗教・儀礼』汲古書院、2021年)、「両部神道の形成――鎌倉時代を中心に」(『智山学報』71、2022年)を発表した。 また、国際学会としてヨーロッパ日本協会(EAJS)の第16回大会(オンライン)に参加、「胎内十月図の成立と展開 The Formation and Development of the "Images of the Ten Months in the Womb" (tainai totsuki zu)」を発表し、父母代灌頂の性格について報告した。
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