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2017 年度 実施状況報告書

降霊術から腹話術へ~西洋近代「魔女」概念の形成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02250
研究機関東京大学

研究代表者

高井 啓介  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (00573453)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード旧約聖書 / 降霊術師 / ヘブライ語 / ギリシア語 / 腹話術師 / ダイモーン / エンガストリミュートス / バアラト・オーヴ
研究実績の概要

初年度には、研究内容を以下の2点に集中して実施した。(1)古代イスラエルの女性降霊術師を表す単語エシェト・バアラト・オーヴが聖書の他言語への翻訳版においてどのような単語に変化したかについて比較分析をすること。これはBibleWorks10をはじめとする聖書データベースソフトウェアを最大限に活用して行った。(2)原語と翻訳語を比較することにより、ヘブライの降霊術師とヘレニズムの「腹で語る」占い師とが同一視されるようになる理由を詳述すること。ユダヤ教ラビおよびキリスト教教父の聖書注解(サムエル記上28章)において変化の過程を確認し、その背景にある変化を促した理由を解明することを目的とした。
以下が初年度の成果である。(1)については、当初の研究計画にある通り、アラム語、シリア語、ギリシア語、ラテン語、その他すべての翻訳版の写本および当該箇所のテキストを確認し、聖書翻訳においてヘブライ語のエシェト・バアラト・オーヴが別の単語(ギリシア語のギュネー・エンガストリミュートスおよびそれぞれの言語でそれに対応する語)へと置き換えられていることを確認すると共に、置き換えられたその単語がそれぞれの言語においてどのような意味と内容および背景を持つかについて調査を行った。(2)については、オリゲネス、エウスタティウス、テオドレトスをはじめとするサムエル記上28章の聖書注解を詳細に読み込む作業を行った。そのなかで、ギュネー・エンガストリミュートスへの評価がおおむね負のイメージに支配されるとともに、それが体内のダイモーンを抱えているからであると見做されるようになっていたということが確認されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

古代イスラエルの降霊術師・降霊術と古代ギリシア・ローマの腹話術師・腹話術という二つの相異なる人物像とその術が、旧約聖書のギリシア・ラテン語への翻訳およびその注解という事象を契機として強く結びついたということをまず例証するという基本方針を維持しながら、当初計画した内容以外に、腹話術師の体内に宿るというダイモーン、ダイモニオンという悪霊に対する検討にも着手しており、そのことは新たな展開として成果が期待できる。また、次年度には論文執筆の具体的計画があり、平成29年度の研究成果がそのような場を通して発表されることになる。

今後の研究の推進方策

引き続き、旧約聖書の降霊術師(エシェト・バアラト・オーヴ)がギリシア語の聖書翻訳以降、「腹で語る」占い師(ギュネー・エンガストリミュートス)へと変化した過程を文献内で確認する。
旧約聖書の降霊術師(バアラト・オーヴ)が必ずしも持っていなかった負の側面、邪の意味合いが、ギリシア語の聖書翻訳における降霊術師(エンガストリミュートス)に対して付与されるようになるが、その背景として、キリスト教教父の聖書注解のなかでエンガストリミュートスの体内に悪霊のイメージが強いダイモーン、ダイモニオンの存在があるということが初年度の研究によりわかってきた。
以後は、古代末期のキリスト教教父の聖書注解に加えて、中世を経て近代に至るまでの関連資料を詳細に検討することで、エンガストリミュートスとされた降霊術師とダイモーンの関係をさらに明確にし、そのことに関する研究論文を執筆し、学会報告を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額として生じた額に相当する欧文書籍の購入を計画し注文の段階にまで進んだが、代理店の都合により注文した書籍の遅配が生じ、初年度の研究費使用期限の最終段階に至って、期限内に書籍を入手することが不可能であることが判明した。従って、やむを得ず、その金額を次年度に使用することにせざるを得なかった。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 旧約聖書の降霊術に関するキリスト教教父の釈義について2018

    • 著者名/発表者名
      高井啓介
    • 雑誌名

      宗教研究

      巻: 91 ページ: 213-214

  • [学会発表] 旧約聖書の降霊術に関するキリスト教教父の釈義について2017

    • 著者名/発表者名
      高井啓介
    • 学会等名
      日本宗教学会

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公開日: 2018-12-17  

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