研究課題/領域番号 |
17K02252
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (30207980)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 啓蒙 / 科学史 / 社会科学史 / 経済学 / 知性 / エコノミー |
研究実績の概要 |
本年度は主に自然科学とのかかわりの中で、啓蒙が社会の秩序をどのようにとらえていったのか、またそこには今日的に見てどのような難点があり、啓蒙批判やそれ以後思想的展開に結びついたのかという点について検討を深め、とくに啓蒙を代表する社会の科学である経済学の形成と展開について、以下のような視野を得ることができた。(1)近代社会科学は直接にではないが、間接的に自然科学との連関の中で発展した。(2)そのうち重要な科学モデルには初期近代医学とニュートン物理学があり、前者はとくにペティ、ケネー、スミスなどマクロ経済学的な理論と関連があり、後者は19世紀後半以後に「近代経済学」として展開し、それぞれ経済学の古典派的モデル、近代的モデルとなった。(3)さらにもう一つの類型である制度的、歴史的、進化的モデルについては、有機体論や進化論などがかかわっている。(4)これらの展開は、進化論成立以前の時代における社会秩序の二つのとらえ方である、自然的秩序と自発的秩序の対立が根底にある。(5)このようにとらえらえた場合、人間のソーシャリオティ理解には、知性のエコノミーと生命のエコノミーの二つがありうると考えられる。啓蒙の社会秩序観は一様ではないが、総じて前者の方向だったと考えられ、その点が19世紀以後に課題となっていくと考えられる。 以上の研究業績の一部は、編著『現代経済学史の射程:パラダイムとウェルビーイング』(ミネルヴァ書房、2019年4月)に執筆した2つの章で公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はとくに障害なく進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究は順調に進捗しているので、以後も当初の予定通りに進めることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大学院指導等の本務多忙の影響等で、実地調査で使用できる期間が予定より短期間となった。しかし研究の進展が予想以上に順調であったため支障はなく、海外、国内での実地調査の回数が少なくてすんだ。そのため次年度の内外での実地調査の回数、研究集会の計画を増やし、当初計画以上の成果を収めることができるように企画した。
|