研究課題/領域番号 |
17K02254
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
伊藤 徹 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (20193500)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 時間イメージ / 寺山修司 / 是枝裕和 / 柳宗悦 / 夏目漱石 / 小津安二郎 |
研究実績の概要 |
2020年度に関しては、多くの研究がそうであるように、新型コロナウィルス感染による影響は甚大であった。なによりも予定していた研究成果の公表の一つである海外での招待講演ならびにワークショップが軒並み不可能になった。 だが過去三年間の研究蓄積を、一冊の単行本としてまとめ、公表できたことは、研究成果の一つとして挙げることができる。すなわち『《時間》のかたち』は、2020年9月、堀之内出版から公刊されたが、これは「寺山修司《書を捨てよ、町へ出よう》・映画における音楽の機能」、「小津安二郎の時空表象」、「是枝裕和《歩いても歩いても》・時間の淀み」、「可能性としての「用即美」・柳宗悦」、「夏目漱石『道草』が書かれた場所」の五章に総論としての序章を加えたものからなる。本基盤研究が目指していたものに加え、現在活躍中の是枝裕和の作品を取り上げたのは、一つのトピックだった映画論の発展的成果といってよい。また代表者がかつて取り組んだ柳宗悦の道具論の脱構築は、本研究の時間論的眼差しにおいて、可能となったものであった。総じて知と生の背景として対象化されない時間ならびに、それと区別されない空間を、対象化以前のものとして置いたまま、把捉不可能なこの事柄に対して紡ぎ出されるイメージを、寺山に始まるそれぞれの対話相手において、取り出して見せたものとなっている。序章では、時間論と哲学との関係、体系とは異なった「物語」という知のスタイル、さらに進展する高度科学技術社会のなかでの生き方についての考察を展開した。 また上記柳論のもととなった論文が、中国語に訳されて、論文集の一項として公刊されたことも、研究実績の一端として付記しておく(「柳宗悦:民芸思想的現代性、黄蘭翔主編『世界、東亜及多重的現代視野・台湾芸術史進路』、国立台湾美術館、2020年11月、125-152頁、岸野俊介訳)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた成果公開のための海外講演、ならびに海外からの招へい研究者の賛歌も含むワークショップが、新型コロナウィルス感染拡大のため、すべて中止を余儀なくされた。ただし研究そのものは、予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
延期した1年のあいだに、遅延の原因となった新型コロナウィルス感染が収束するがどうかは、残念ながら不確定といわざるをえない。最悪の場合も念頭に入れ、成果公表は別な形をとるとともに、今後の研究発展を、とくに寺山修司の時間表象論に重心を置いて図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大によって、当初計画していたドイツでの招待学術講演ならびにワークショップが中止を余儀なくされたため、延長申請済みの次年度使用額が生じた。2021年度は、感染状況に注視しつつ、上記講演・ワークショップの可能性を探りつつ、中止の場合も考慮に入れて、時間表象研究の進展のための調査を行っていく予定である。
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