本年度は、最終年度として、今までの研究成果を論集にまとめる作業を行なった。具体的にその論集は『寺山修司の遺産――21世紀の今読み直す』として堀之内出版から出版されるものであり、以下のように代表者を含め7人の筆者からの寄稿を含む;第一章「虚構が「真実」になるとき――密室劇《阿片戦争》」(伊藤徹)、第二章「居場所としての言葉 ―寺山修司の自分語と詩的表現」(澤田美恵子)、第三章「機械仕掛けの巫女殺し――「政治の季節」のテレビドキュメンタリーをめぐって」(青山太郎)、第三章「寺山修司の「幸福」の政治学」(荻野雄)、第四章「寺山修司と競馬」(檜垣立哉)、第五章「初期の天井棧敷のポスターを読む――劇との関係を中心に」(前川志織)、第六章「小劇場運動と「肉体」――寺山修司をめぐる文化的野心とともに」(若林雅哉)、第七章「ナンセンスの時代と寺山修司」(平芳幸浩)。これに三沢市寺山修司記念館館長佐々木英明氏へのインタビューと同館学芸員広瀬有紀氏の手によるコラム「あなたはいったい誰ですか?」を加えて、2023年6月末上梓される予定である。なお同論集は、代表者と執筆者の一人檜垣立哉氏による共編。 同論集の趣旨は、没後40年を迎える寺山修司が残したものを現代的問題への接続を意識しながら読み解こうとするところにあって、寺山の事績の紹介、あるいはその歴史学的考証を超えて、思想史とはどうあるべきかに関する具体的な提言として世に問うものであることを付言しておく。 寺山に関しては、上記記念館で開催されたラジオドラマ展示を調査し、未公開の音源にも触れることができた。研究成果のなかには含めることはできなかったが、後日これについての論評を行ないたいと考えている。
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