研究課題/領域番号 |
17K02257
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
栗原 剛 山口大学, 人文学部, 准教授 (50422358)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 武士道 / 葉隠 / 日本倫理思想史 |
研究実績の概要 |
本年度は、佐賀県立図書館が所蔵する『葉隠』写本(天保本・杉原本と称されるもの)からの翻刻作業を、暫定的にではあるが全て(「聞書一」~「聞書十一」)終了した。具体的には、写本の文面を解読した上で活字としてデータ化し、これを研究代表者・研究協力者全員が共有する、という形をとった。その上で、冒頭の序文と「聞書一」~「聞書三」については、本文に対するより精密な校訂作業、および語注・人物注・現代語訳の作成作業を行い、これらを完遂することが出来た。具体的には、代表者と協力者が役割を分担した上で、各自の作業を持ち寄り全体を統一する、という形をとったが、とくに『葉隠』の独自な思想が色濃く表れている「聞書一」「聞書二」に関しては、代表者・協力者が連絡をとりあい、内容についての議論を行った上で、各自の作業にあたった。こうした「聞書三」までをめぐる仕事は、『新校訂 全訳注 葉隠(上)』(講談社学術文庫)として刊行され、得られた成果が書籍として公開される運びともなった。なお、本年度中二回にわたり、佐賀県立図書館および佐賀市内各所における、資料収集と現地調査を行った。これにより、作業に必要な諸写本を閲覧・複写することが出来ただけでなく、『葉隠』ゆかりの重要な史跡や寺社にかかわる知見を、直接得ることも出来た。以上、本研究が目指す〈『葉隠』における武士道、およびその倫理思想的位置づけや現代的意義を再考する〉という目的に照らして、初年度としてはそこへの十分な足がかりを得ることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
訳注作成作業に関して、本年度の計画としては当初、続く作業全体のひな形とすべく「聞書一」「聞書二」までを対象とする心づもりであったが、実際には「聞書三」までに対する作業を終えるとともに、現時点までの成果を公表することも出来たため。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き『葉隠』に対する本文校訂・訳注作成の作業を進めると同時に、思想的な内容をめぐる考究についても随時深めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費として見込まれた額の算出根拠であった年2回の出張には、どちらにも計4名(研究代表者および研究協力者3名)が参加する予定であったが、実際には研究協力者の都合が折り合わず、1回めは代表者1名、2回めは代表者と協力者2名(計3名)のみの参加となったため。浮いた分については、次年度の物品費として使用する予定である。
|