研究課題/領域番号 |
17K02258
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
後藤 正英 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (60447985)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 啓蒙主義 / メンデルスゾーン / 寛容 / ユダヤ人 / マイノリティ / ローゼンツヴァイク / 宗教 / スピノザ |
研究実績の概要 |
今年度は、当初は三年目に予定していた研究者の招聘講演を、先方の事情により一年早めて7月に実施した。今回、来日したのは、ユダヤ啓蒙思想の歴史研究において世界的に有名なシュムエル・ファイナー氏(バルイラン大学)と近代ユダヤ思想研究の中堅世代を代表する研究者であるミヒャ・ゴットリープ氏(ニューヨーク大学)である。東京と京都で講演会を実施したが、いずれの講演会も、日本ユダヤ学会と京都ユダヤ思想学会による共催企画として実施した。 東京プログラムでは、ファイナー氏は「ユダヤの伝統への挑戦 ―18世紀ヨーロッパのおける楽しみ、文化変容、世俗化」、ゴットリープ氏は「モーゼス・メンデルスゾーンの現代性:マイノリティにとっての教訓」という題目で講演をおこなった。講演会の開催にあたっては、市川裕教授(東京大学)にご協力いただいた。通訳はギブソン松井教授にご担当いただき、市川教授と向井直巳氏(京都大学)に代表質問を務めていただいた。 京都プログラムでは、ファイナー氏は「モーゼス・メンデルスゾーン ―神話、歴史、宗教的寛容をめぐるユダヤ教徒の闘い」、ゴットリープ氏は「ドイツのユダヤ哲学が辿った二つの道 モーゼス・メンデルスゾーンとフランツ・ローゼンツヴァイク」という題目で講演をおこなった。開催に際しては小野文生准教授(同志社大学)にご協力いただいた。質問は、後藤と細見和之教授(京都大学)が担当した。 その他の研究業績の概要は以下の通りである。日本宗教学会ではメンシングの寛容論について口頭発表を行い、啓蒙期の寛容論の位置づけを明確にする作業を行った。スピノザ協会に参加し、18世紀のスピノザ主義に関する研究知見を深める機会をもった。さらに、日本18世紀学会の学会誌にジョナサン・イスラエル『精神の革命』の邦訳に関する書評を寄稿し、イスラエルの急進的啓蒙主義研究の特徴について再確認をする機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は最終年度である三年目に予定していた海外の研究者(ファイナー氏、ゴットリープ氏)の招聘を二年目に実施した。豪雨など天候の問題もあったが、全体として極めて有意義な研究交流の機会をもつことができた。今回の来日は、研究者間のネットワーキングを拡充する点で大きな意味があり、多数の関連領域の研究者(武井彩佳氏、斉藤渉氏、鶴見太郎氏、アダ・コーヘン氏、手島勲矢氏など)と研究交流をする機会を設けることができた。さらに、メンデルスゾーンとユダヤ啓蒙思想について最新の研究動向をめぐる意見交換をおこなうことができた。 このように、二年目の段階で今回の科研プロジェクトの大きな目的の一つである講演会を既に開催することができたので、当初の計画以上に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ファイナー氏とゴットリープ氏による講演原稿の日本語訳を『京都ユダヤ思想』(京都ユダヤ思想学会)と『ユダヤ・イスラエル研究』(日本ユダヤ学会)に掲載していただく予定で準備を進めている。講演原稿の翻訳にあたっては、加藤哲平氏、石黒安里氏、佐藤香織氏、鳥越覚生氏の協力を得ている。 秋にはニューヨーク大学を訪問し、ゴットリープ氏のサポートのもとでセミナーに参加する。メンデルスゾーンについて報告を行い、現地の研究者との交流を深める予定である。さらに、長年の懸案であったメンデルスゾーンの主著『エルサレム』の翻訳を完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度、ニューヨークへの渡航費や滞在費ならびに国内学会への出張費が必要となるため、余裕をもって研究活動がおこなえるように、次年度への使用額を少し残した。
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