研究課題/領域番号 |
17K02265
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
曽田 長人 東洋大学, 経済学部, 教授 (50568053)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人文主義 / 古典研究 / 思想史 / 戦争協力 / ナチズム / 古典文献学 |
研究実績の概要 |
研究の初年度に当たる2017年度は、まずインターネットやメールでの問い合わせ等を介して、ドイツ語圏の図書館・大学資料館・文書館における、研究対象となる人文主義者に関する資料の所蔵状況を調査した。その過程で、ベルリンとバイエルンのアカデミー図書館にも当該の人文主義者に関する資料が所蔵されていることがわかり、この二つの図書館も現地での調査先へ加えた。 次に夏季および春季の休暇を利用してドイツ語圏の図書館・大学資料館・文書館を実際に訪問し、当該の人文主義者に関する(一次、二次)資料を収集(閲覧・複写)した。さらに類似のテーマに関して研究を行っているドイツ、スイスの研究者と情報の交換を行った。これにより、研究の対象とする資料の所蔵状況がおおよそ明らかとなっただけではなく、本研究の基礎と言える(閲覧可能な一次)資料の約七~八割を閲覧することができた。資料の読解や、論文の執筆や研究会での発表といった形での研究成果の公開も、部分的に行うことができた。 今年度の資料収集に当たって大きな成果として、以下の二点が挙げられる。第一に、バイエルン・アカデミー図書館に所蔵されているK.v.フリッツの記録を閲覧できたことである。その中には、後の彼によるヒトラーへの忠誠宣誓拒否の背景を考える上で貴重な資料があった。第二に、H.ベルヴェに関する非ナチ化の審査文書が閲覧できたことである。その中には、人文主義者によるナチズムへの協力を考える上で重要な記録が含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主に以下の二点が挙げられる。 第一に、研究を進める過程で、研究計画の一部変更を余儀なくされた点である。当初の計画ではナチズムへの「協力」を代表する人文主義者の一人としてJ.フォークトを取り上げる予定であった。しかし彼の言行について調べてゆくうちに、彼とナチズムとの関わりの評価が難しいこと(彼の擁護派と糾弾派の対立)、フォークトの遺稿が所蔵されているウルビノ大学図書館で資料の閲覧に困難が予想されること等が判明した。したがってナチズムへの「協力」者としてほぼ異論の余地がなく、(一次、二次)資料が多く保存されているR.ハルダーを、フォークトの代わりに研究対象として取り上げることとした。 第二の点は、資料の読解と関わる。研究の初年度、研究の対象とする人文主義者に関して、予想を上回る多くの(一次、二次)資料を収集(閲覧・複写)することができた。これらの収集した資料を整理するのに予定よりも多くの時間を要し、資料の読解や研究成果の公表のための作業が予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、初年度の関心を継続し、研究対象となる人文主義者に関する(一次、二次)資料のドイツ語圏の図書館・大学資料館・文書館における収集(閲覧・複写)を行う。夏季休暇にはグライフスヴァルト大学の資料館、ゲッティンゲン市の文書館においてK.ツィークラーに関する資料を収集し、ベルリン・フンボルト大学の資料館においてW.イェーガーとW.シャーデヴァルトについて調査することを計画している。ライプツィヒのドイツ国立図書館においては、日本の大学図書館に所蔵されていない、研究の対象とする人文主義者の著作、関係文献の収集を行う。さらにアメリカのハーヴァード大学図書館においてW.イェーガーの遺稿、ニューヨーク州立大学オールバニ分校の図書館においてK.v.フリッツに関する資料の収集を行う。初年度の調査で、ドイツの図書館、大学資料館、文書館における遺稿・自筆原稿等の所蔵資料を調べるためのKalliopeというサイトの存在を知らされた。このサイトを有益に活用し、遺漏ができるだけない資料収集を心がけたい。その他、外国への滞在中には、本研究と交わる研究を行っている外国人研究者との情報交換を行う。 第二に、研究計画の変更点として学術コロキウムの開催は行わない。理由は、本研究は日本で一般化していないテーマのため、コロキウムの準備や開催後のまとめのため相当な時間、労力が予想されることがわかったである。その代わりに収集した資料の読解を重視し、コロキウムとは別の形で研究成果の公開を行い、論文や学会発表の準備を優先させることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年2~3月の出張での現地交通費54,542円をH29年度の予算から支出すると足りなくなってしまうため、これについてはH30年度予算から支出することとし、H29年度予算の残額35,870円を繰り越すため。
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