研究課題/領域番号 |
17K02275
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
永由 徳夫 群馬大学, 教育学部, 教授 (30557434)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 書論 / 書道史 |
研究実績の概要 |
本研究「中・近世書論を基盤とする「日本書論史」の構築」は、平成23年度~26年度における科研費基盤研究(C)「中世書論に基づく日本書道史の再構築」(課題番号23520152)を基礎として、さらにその発展をめざしたものである。 本研究は、中・近世の書論を基盤として「日本書論史」という新たな学問分野の構築をめざすものである。近世書論は流儀書道の保持を念頭に置く〈和様書論〉と中国書論を摂取した〈唐様書論〉とに大別されるが、両者の関係についてはこれまで言及されていない。近世の公用書体「御家流」は中世書論『入木抄』を著した尊円親王の流れを汲む和様書であるが、儒者・文人等知識層においては唐様書が好まれた。果たして〈和様書論〉と〈唐様書論〉における交流はどの程度であったのか、「連関と対峙」の視点から検証する。本研究では、「日本人の美意識とは如何なるものであるか」という観点より、新たな学問分野「日本書論史」を樹立することを最大の目的とする。 平成29年度は中世書論、とりわけ世尊寺家の書論の体系化をめざした。その一つとして、「日本能書列伝(二)―日本古書論を典拠として―」(『群馬大学教育学部紀要(人文・社会科学編)』第67巻,23-33頁,2018)を執筆し、世尊寺家の能書を中心とする能書の事績を明らかにした。 また、公益財団法人無窮会蔵の『夜鶴庭訓』の翻刻を行い、論文「無窮会本『夜鶴庭訓』の研究」を執筆した(『東洋文化』第115号,投稿済み,査読有り)。さらに、論文「日本書論史序説―世尊寺家書論の体系化への試み」を執筆し、中世書論の体系化への序章とした(『書学書道史研究』第30号,投稿済み,査読有り)。今後は、これらの研究を踏まえて、「日本書論史」の樹立をめざしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「日本書論史」の樹立をめざし、その基礎資料となる論文を3編執筆したことによる。1編は刊行済み、2編は投稿し、査読申請をしている段階である。 刊行済みの論文は、「日本能書列伝(二)―日本古書論を典拠として―」,『群馬大学教育学部紀要(人文・社会科学編)』第67巻,23―33頁,2018 である。 投稿済み、査読申請中の論文2編は、「無窮会本『夜鶴庭訓』の研究」(『東洋文化』第115号,投稿済み,査読有り)、「日本書論史序説―世尊寺家書論の体系化への試み」(『書学書道史研究』第30号,投稿済み,査読有り)である。 これら3編の論文を執筆したことにより、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
論文「無窮会本『夜鶴庭訓』の研究」において、公益財団法人無窮会蔵『夜鶴庭訓』が諸本とは大きく異なることが判明した。この『夜鶴庭訓』は、世尊寺家書論の一つである『心底抄』(世尊寺家九代目・藤原経朝著)と何らかの関係性があるように思われる。この関係性について、研究を深めていきたい。 『心底抄』(1272年頃成立)は、世尊寺家六代目・藤原伊行著『夜鶴庭訓抄』(1165年頃成立)や同八代目・藤原行能著『夜鶴書札抄』(1240年頃成立)の影響を強く受けいているとされてきたが、これまでの研究に拠れば、明らかに性質を異にする。この理由を解明しながら、世尊寺家書論を体系化していく。さらに近世にまで目を向け、〈和様書論〉へどのようにつながっていくのか、研究していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
参考となる古書を購入する予定であったが、入手できずに残額となった。77,429円は次年度に先送りすることとし、研究の遂行上、必要不可欠な物品の購入に充当、もしくは、資料収集のための旅費として使用する計画である。
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