研究課題/領域番号 |
17K02276
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
遠藤 徹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10313280)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 楽律 / 音律 / 中島高雲 / 十二律 / 浅井休伯 / 五音 / 五臓 |
研究実績の概要 |
本年度は、中島高雲が著した楽律研究書の「十二律正義」の分析を中心に研究を進めた。「十二律正義」は十五巻からなる大部のもので、自序によると文化二年(一八〇五)二月に成立した。写本は宮城県図書館所蔵の伊達伯觀瀾閣圖書印を有する伊達家旧蔵本が現在確認されている唯一の伝本となっている。著者の中島高雲は、管見では「十二律正義」を著したこと以外は史料には現れないが、「十二律正義」によると、医業の修行のために明和年中(一七六四~一七七二)に官医の浅井休伯の随身となっていたことが知られる。 医師でもあったとみられる中島高雲は、中村惕斎、中根元圭、荻生徂徠等の研究成果に学びつつも、これらの先人の楽律学を祖述するのではなく、浅井休伯から学んだ医師の心得としての四知や五音と五臓の関係にもとづいて、「十二律正義」において独特の楽律論を展開しているが、本研究では高雲の楽律論の中から、自序に見える、①楽律の基準は人声、②目で見分けられないような細かい数値は追求しても意味がない、③医書や古書に見える五音と五臓の関係を重視、④五臓六腑の旋宮を作る、⑤五音と五臓の関係に基づいて楽曲を分析し、雅楽と淫楽の相違を示す、⑥楽は商音が第一の六つの観点に焦点を絞って、詳細に分析を行った。これらはいずれも儒学者や算術家の発想からは生まれ得ないような独特の論である。十五巻からなる大著のほとんどが自説に彩られているのも、ほとんど他に類例を見ないものであり、「十二律正義」は近世日本で展開した楽律学が生み出した一つの方向性の極みとも言える。高雲説の当否については今後に一つ一つ慎重に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの関係で、予定していた資料調査を実施することができなかったこと、6月に予定されていた国際研究会が延期になったことなどによる。
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今後の研究の推進方策 |
延期した資料調査を行った上で、収集した資料の分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた資料調査が行えなかったことと、国際研究会の延期、研究の進捗状況の遅れによる。予定していた資料調査を行い、国際研究会等において研究成果の発表などを行う。
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