現在広く用いられているアルファベットの音名表記法は、音楽を成り立たせる音組織構造を明示するものであるが、その成立過程については未だ不明瞭な部分が多い。本研究では、アルファベット音名表記の成立期に著されたフクバルドゥスの『音楽論Musica』を中心に、そこでの音名表記法と音組織構造の関連性について、特に豊富に配された図表を精査することにより、アルファベット音名表記の成立を考える上では、オクターヴ枠の音組織構造とテトラコルドとの関係性が重要であること、及び音組織構造における上行下行といった音の向きに注目する必要があることを明らかにした。
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