研究課題
今年度は、本研究最終年として計画通りの発表を行うことができた。まず、CIHA(国際美術史学会)にて、ベトナム知識人たちが翻訳造語である「美術」をいかに受容・展開していったのかを発表した。これは、これまでの研究をまとめたものであり、19世紀後半以降から1940年までの、仏越、越仏、越越、越中辞書、類語辞典、および、知識人のエッセイなどを発表のために分かりやすく図表化したものである。この発表は、プロシーディング論文としてまとめた。また、第22回ICLA(国際比較文学会)では、画家の第一世代であり、ベトナム絵画誕生の重要な鍵を握るベトナム画家のひとり、マイ・トゥの作品論を発表した。この画家マイ・トゥに関する研究はほぼ未着手だったが、「美術」の枠組みからはみ出した要素を救い上げ、それをうまく絵画に取り込んだ画家であり、ベトナム絵画の誕生に大きく貢献した画家だと言える。今年の海外調査では、さらなる文献の入手をすることができ、本研究を土台とする新たな課題と展望を見出すことができた。最後に、この研究を核とする、過去10年間にわたるベトナム近代美術の研究を、学位請求博士論文「安南藝術からベトナム美術へ:フランス統治下の半世紀」(東京大学 総合文化研究科)として提出することができた。これは、ベトナムにおける「美術」の近代化とは、いかなる現象であったのか。また、フランスはどんなartsをベトナムに求め、如何なる教育を行ったのか。近代ベトナム絵画は、どのようにして出現し、発展し、今のような形になったのだろうかという問いに答えるべく、1887年から1945年までのフランス植民地下に限定したベトナムの美術・藝術の分析を比較文化研究と文化交渉学の立場から考察したものである。
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巻: 43 ページ: 34-56
Toward the Future: Museums and Art History in East Asia, Proceedings of the 2019 CIHA
巻: 1 ページ: NB