研究課題/領域番号 |
17K02283
|
研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (10184251)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ピアノ / 国産 / 万国博覧会 / 洋楽器産業 / オルガン |
研究実績の概要 |
本研究は、洋楽導入後の明治期から昭和前期にかけての日本のピアノ製造に着目し、その発展メカニズムと音楽文化とのかかわりを読み解き、さらに、それを国際的な文脈に置き直す試みである。研究2年目となる2018年度は、まず、同じ鍵盤楽器ということでピアノ製造と深い関係にある日本のオルガン製造について研究をおこない、フィレンツェで開催されたEMS2018国際学会で英語による発表をおこなった。あまり知られていないが、ヤマハが欧米諸国と同じ1930年代に電気オルガンを発表していたことは注目すべきであり、それが戦後のエレクトーンの開発にもつながったことを明らかにした。11月には上海で開かれた国際シンポジウムで「上海のモートリー商会と近代日本のピアノ製造の発展」というテーマで招待講演をおこなった。19世紀にアジア諸国に西洋楽器がもたらされたときに、上海は日本よりも先にピアノ製造の拠点となっていたが、その後、日本でピアノ・オルガン製造は急速な発展を遂げた。 また、2019年1月から2月にかけて1週間ほどパリの国立図書館とロンドンの大英図書館およびヴィクトリア・アルバート博物館でフランスとイギリスのピアノ製造についての文献や日英博覧会の記録などを調査した。その結果、フランスとイギリスのピアノ製造が衰退していった過程をつぶさにたどることができた。 戦後のピアノ製造の発展については、その裏にあった学校の器楽教育の普及に着目し、「戦後の器楽教育と鍵盤楽器産業」について紀要論文を執筆した。さらに、万国博覧会とピアノの発展との関係について研究を進め、論文を書いた。これは京都大学の佐野真由子教授が代表となっている日文研の「万国博覧会と人間の歴史」の研究会で骨子を発表した。論文本体は来年刊行される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況について、「やや遅れている」という評価にせざるを得なかった最大の理由は大学の役職に伴う公務が忙しく、研究時間をまとめて取ることが難しかったことによる。また、国外での学会やシンポジウム等での外国語による講演や研究発表が入ったたため、それらの準備の時間が必要になったことも影響している。 とはいえ、国外での研究発表を通じて、研究に関する貴重な意見もいただき、また、新たな気づきも生まれた。
|
今後の研究の推進方策 |
予定を組み替え、効果的な研究遂行をめざす。昨年度で大学の役職の任期が終了し、研究に割ける時間が少し増えたため、積み残しの課題に精力的に取り組む。、
|
次年度使用額が生じた理由 |
公務多忙のため、国外・国内調査に十分な時間をかけることができず、その分の旅費が繰り越されたことが大きい。もう一度予定を組みなおして、今年時間をかけた調査をおこないたい。
|