研究課題/領域番号 |
17K02290
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
毛利 三彌 成城大学, その他, 名誉教授 (10054503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イプセン / 近代日本演劇 / 比較演劇史 |
研究実績の概要 |
私がconvenerの一人をつとめている国際演劇学会(IFTR)のアジア演劇Workiing Groupは、学会の年年次大会以外に、2018年2月にマニラの国立フィリピン大学で開催した。そこで私は司会をつとめ、アジア各国からの出席者の間で、アジアの近代演劇について活発が議論が行われた。特に、インドと台湾の近現代の演劇のおける西洋の影響あるいは、その影響に対する反発についての発表内容に、議論は沸騰した感があった。 私はこの機会に、マニラの別の大学セント・トーマス大学の古い友人の依頼で、私の演出した異文化演劇上演「ふたりのノーラ」に関する講演を行ったが、日本の近現代演劇についての興味が大きいことを実感した。 2017年度には、いくつかの講演を行った。長野県伊那での演劇論講座の連続講義は、3回行われ、日本の近代演劇の成立から戦後の状況に至るまでを講義した。講義後の聴衆との交流も、私の研究を一般に広めるためには、非常に有益であった。また、成城大学および慶応大学での講演は、戦後の日本における演劇活動と教育の関係について多く考えるところがあり、現在再び高まってきた教養教育と演劇とのかかわりについての議論は、講演後の出席者との質疑応答を含め、演劇のあり方に関する示唆を受けた。 私は2016年にイプセンの『人民の敵』を演出したが、そのときの作品解釈および舞台表現をもとに書いた論文を、成城大学文芸学部の紀要『成城文藝』に寄稿し、その論文の翻訳ではなく、新たな執筆として、同じ内容に基づく英語論文を、イギリスの北欧文学専門の学術誌『スカンジナヴィカ(Scandinavica)』に投稿した。英語論文は採択され、17年末発行の号に掲載された。まだその反応は出ていないが、18年8月にノルウェーで開かれる国際イプセン会議でも、発表し、私の独自の解釈と演出について、意見を聞くつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画よりやや遅れたのは、前年度に決定されていた17年度開催予定の国際イプセン会議が、またも18年9月まで延期されたことで、日本でのイプセン研究・上演に関する発表ができず、海外の研究者との議論の場をもつこともできなかったからである。 このため、計画しているイプセンをめぐる日本演劇近代化の歴史を執筆することも、当初どおりに進捗していない。しかし、いくつかの講演、連続講義などによって、その遅れを取り戻してきていることも確かである。
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今後の研究の推進方策 |
18年度は、国際演劇学会の年次大会及び、国際イプセン会議に出席し、近代の日本演劇とイプセンとのかかわりについて、海外の研究者と討論する予定である。それによって、私の国際的な視野は大いに広がるものと期待している。また、毎年行われているアジア演劇Working Groupのアジア・コロキウムは、本年度は韓国のソウルで行われる予定だが、日本と韓国の近代演劇史の比較研究には、大いに得るところがあるだろう。 2013年から3年間行われた京都の国際高等研究所における共同研究は、その成果として「古典演劇の伝統と近代」という論文集を、18年度中に出版することになっている、現在すでに原稿がそろいつつあり、私は編者の一人として、近代演劇の流れを概観するための多くの示唆を受けることになるだろう。 日本演劇学会の春の年次大会は神戸で、秋の研究集会は静岡で開催予定だが、研究集会では、劇場論がテーマになっている。私はその基調講演を行うことを依頼されているが、演劇の近代化の最大が劇場の西洋化であったことからも、このテーマは、私の研究課題にとって、少なからぬ意味をもつと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年に予定され、出席するつもりであった国際イプセン会議のロンドン開催がキャンセルとなったため、その旅費として計上していた予算額を消化できなかった。 この国際会議は、2018年9月にノルウェーのシェーエンで開かれることが決定されて、その準備は進んでいるので、当該予算額は、その旅費として使用することになる。
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