研究課題/領域番号 |
17K02290
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
毛利 三彌 成城大学, その他, 名誉教授 (10054503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イプセン / 近代日本演劇 / 比較演劇 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究実績は主に、内外の演劇学会における口頭発表と論文発表の形で公けにした。まず7月にセルビアのベルグラードで国際演劇学会2018年年次大会があり、そこでアジア演劇ワーキングループ・コロキウムのコーディネイト及び司会をつとめた。コロキウムでの討論では、他のアジア諸国の近代演劇特有の問題が論じられ、植民地経験のない日本の近代演劇の特殊性も浮き彫りにされた。 9月にはノルウェーのシェーエンで国際イプセン会議が催され、わたしは2016年に東京で演出したイプセンの『人民の敵』について発表し討論した。この劇は19世紀半ばのノルウェーにおける温泉汚染問題を扱ったものだが、これが日本で最初に上演したイプセン劇で、それは当時の足尾銅山汚染に重ね合わせて上演されたことから、わたしは、現在の原発問題に重ねて翻案上演した。このイプセン会議はオスロの国際イプセン演劇祭に直結していたから、世界のイプセン舞台の今日的状況を知ることができ、これはわたしのイプセン理解に大いに寄与した。 2019年2月には、韓国のソウルで、アジア演劇研究のコロキウムが開催され、ここでもコーディネイト及び司会の役割を果たすとともに、Expanding or Going beyond the Boundaries of Theatreの表題で、大阪大学の永田靖教授と共同発表を行った。 そもそもわたしのイプセン理解は、大学時代のギリシア悲劇上演の経験と密接につながっているが、このことを改めて考察したのが、2017年10月の成城大学における講演会『古代ギリシャーー遥かな呼び声にひかれて』での私の講演だった。2018年には、この講演会の内容を単行本に、編集者としてまとめたが、そこではギリシャ悲劇とイプセンの関係を改めて考察し、論文「古代の叫びと近代の沈黙」として掲載した。この本は、2019年3月に刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度2017年度は、予告されていた国際イプセン会議がキャンセルされたため、それによる成果は、2018年度に実現された。それによって、全体として、研究はおおむね予期通りの進捗状況をみることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2019年度には、2つの国際会議が予定されているが(7月上海の国際演劇学会年次大会および2020年2月のアジア演劇コロキウム、開催地未定)、これらの会議でも、発表討論とともに、コーディネイト及び司会の役割をつとめることになる。これらは、イプセンにかかわる近代日本演劇の独自の問題性を明らかにすることに役立つだろう。 最終年度として、これまでの研究成果を総合的にまとめ、論文として演劇学会紀要その他に発表する予定である。その研究成果を広く一般に公開する方法としては、イプセンの現代解釈による上演を計画しているが、それは2020年2月に具体的に実現する予定になっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソウルにおける国際演劇学会分科会の滞在費が、主催者である韓国国立芸術大学によって助成されたため、予定額から残額が生じた。
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