本研究は、2017年度~19年度の3年間の研究だったが、最終年度に予定されていた国際学会(International Asian Theatre Coloquium)が、延期となったために、その旅費その他の経費が繰り越され、2020年度まで延長された。 しかし2020年は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大のため、すべての国際会議は中止となり、予定していたアジア諸国と日本における近代演劇とイプセンとのかかわりを海外の研究者と議論する機会がなく、もっぱら日本のイプセン上演の過去の例を通して、この作家の受容及び影響のあり方を検討することに集中した。その成果の一端として、二十数年前の私のイプセン翻訳(『イプセン劇曲選集ー現代劇全作品』東海大学出版会)を見直し、その現代的な新訳と日本における理解のための注釈をつけて、新たに出版することを企画した。それを近代古典劇翻訳シリーズと銘打って、まず『人形の家』を2020年4月に出し、第2作として『ヘッダ・ガブラー』を2021年3月に出した。 また、2020年2月に私が演出したイプセンの『ゆうれい』について、上演後の総括として、この劇の日本における受容を検討し、新たな視点から論じられる可能性を見出したので、それを2021年7月に予定されている国際演劇学会で発表する準備をしている。その後それを論文にまとめ、国際イプセン学会誌に発表したいと考えている。
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