近代日本演劇、通称新劇の台頭に寄与したイプセンの影響はよく知られているが、それがその後の新劇の発展にいかに作用したか、それが積極的な意味をもったか、あるいはもたなかったかについては、必ずしも明白にされてこなかった。それが本研究の目的であったが、その成果として、日本のイプセン理解は、他のアジアの国のそれとはかなり異なるものであること、そして日本ではイプセンの本質的な性質は十分に理解されないままであったことが明らかになった。そのことは、論文として内外の学術誌に発表したが、また、20数年前の私のイプセン翻訳を見直し、新たに注釈をつけて新訳として出版し、演出することでも、公にしてきた。
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