研究実績の概要 |
最終年度となった2023年度は、これまでの研究成果を国際集会として発信するために5月に国際シンポジウムCapture Japanを立命館大学で日英同時通訳付きで開催した。これは2022年12月にノッティンガム・トレント大学のMarco Bohr氏の編纂でイギリスで出版されたアンソロジー(M. Bohr ed., Capture Japan: Visual Culture and the Global Imagination from 1952 to the Present, Bloomsbury, 2022)のブックローンチを兼ねており、その公刊に先んじて2022年度中に開催する予定であったが、海外からの渡航と対面での開催が困難であったため、研究期間を延長して実施した。13名の著者のうちMarco Bohr氏、萩原弘子氏、Martin Roth氏、 Man-tat Terence Leung氏、Selma A. Purac氏と報告者を含めた6名が登壇し(うち2名はイギリスとカナダからオンライン参加)、グローバルな想像力という視座のもとで戦後日本の視覚文化を論じた各自の章の研究背景と問題意識を共有したうえで、本書が提起する問題について会場の参加者とともに討論した。アンソロジーで扱われた作品のジャンルは写真の他に絵画・映画・漫画・ゲームと多岐に及ぶものの、本シンポジウムでは写真が中心となり、現代にいたる戦後日本の写真をアジア太平洋地域における日米の地政学的、経済的、文化的関係の変容の中で考察すること(Bohr氏)、石内都の「ひろしま」シリーズの展示方法が日本の太平洋戦争観を形成してきた「ヒロシマ写真」の系譜から大きく変容していること(萩原氏)、冷戦時代にグローバルな想像力の形成を目指した写真展での長崎原爆の犠牲者の写真の展示と撤去の問題を当時の核開発の文脈から再考すること(竹中)が議論された。
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