研究課題/領域番号 |
17K02303
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研究機関 | 大阪音楽大学 |
研究代表者 |
井口 淳子 大阪音楽大学, 音楽学部, 教授 (50298783)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | A. ストローク / 興行 / 音楽マネジメント / 上海租界 / 上海フランス租界 / フランス外交史料館 / シャルル・グロボワ / クロード・リヴィエール |
研究実績の概要 |
まず第一に、上海租界で活動した興行主A.ストロークがプロデュースした公演のプログラム(日本公演)および新聞広告(上海公演)のウェブ上公開に向けて、プログラム実物のスキャン、公演年表の整理を行った。さらに、ロシア語新聞、ZariaとSlovoの記事の中からストロークの公演広告を抽出した。 このロシア語新聞の記事や写真は2020年に『亡命者たちの上海楽壇:租界の音楽と芭蕾』(中国語版)彭瑾訳(上海音楽学院出版社)に掲載される予定である。 第二に、ストロークを中心とした上海、大阪、その他アジア諸都市を結ぶ「20世紀前半のアジア音楽ネットワーク」について、さらなる一次資料を収集すべく2019年8月、10日間にわたりフランス、パリ郊外クルヌーブとナント市にあるフランス外交史料館にて上海フランス租界に関係する史料調査を行った。総計3000枚におよぶ文書、書簡等をカメラ撮影した。これまで経歴など不明であった上海フランス租界のシャルル・グロボワとクロード・リヴィエールという二人のフランス人文化人(前者は教育者、音楽評論家、後者はフランス語ラジオ放送責任者)について、本人の自筆履歴書や書簡、上海でのラジオ放送番組表が発見できたことは最大の収穫であった。この両名はストロークと同時期にフランス租界に居住し、劇場公演にも深く関わっていたと考えられる。フランス語ラジオ放送が劇場公演の予告やクラシック音楽についての啓蒙活動を行っていたことも明らかになりつつある。さらには、上海租界消滅後の1950年代前半までの史料が数多く発見され、日本敗戦後もフランス人が租界に残留し、文化教育活動が続いていたことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はストロークに関するロシア語新聞の記事、広告を抽出し、整理することができた。また、パリとナントのフランス外交史料館において、上海フランス租界に関するおよそ3000枚の史料画像を撮影し、その中からフランス租界の楽壇や教育界において主導的な役割を果たしていたシャルル・グロボワ(Charles Grosbois)とクロード・リヴィエール(Claude Riviere)について自筆書簡、自筆履歴書など一次史料を発見することができた。ストロークが拠点とした上海フランス租界の楽壇の様相とアジアの諸都市を結ぶ文化ネットワークについて、史料にもとづく新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年は最終年度であり、これまで3年間に収集したストロークの興行プログラム(日本国内)、上海発行の各国語の新聞記事、ラジオ欄および広告、フランス外交史料館所蔵の史料などを整理、分析し、ストロークのアジアツアーの全容解明とアジアツアーに関わるデータの公開、さらには、ストロークの興行活動を中心にすえた単著(中国語)の完成と刊行に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた郵送料金が不要になったため。次年度に使用予定である。
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