本研究は20世紀初頭の前衛劇運動における日本人アーティストの活動状況の調査を通して、西洋の演劇革新の試みが日本の伝統芸能の様式化された身体所作に強い関心をもっていたことを明らかにした。また彼らの帰国後の活動についても追跡調査し、そこに見られる「文化の編み合わせ」の独特の様相を浮き彫りにした。1920年代の一事象に焦点を当てながらも、こうした新たな身体表現の追求を現代アートにおける「パフォーマンス」的要素の胚胎という根本的テーマへとつなげる問題構制を含みもつところに本研究の学術的意義がある。また関連シンポジウムを開催することによりこの時代への関心を喚起し、企画中の展覧会実現への歩みを進めた。
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