研究課題/領域番号 |
17K02305
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山寺 美紀子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90601097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 荻生徂徠 / 琴学大意抄 / 琴 / 音楽実践 / 近世 / 藤澤東ガイ(田+亥) / 東皐心越 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の①~④を行った。 ①新型コロナウィルスの影響で、今年度は新たな資料の調査に行くことができなかったため、これまでに収集・調査した荻生徂徠の音楽に関する著作の諸伝本と周辺資料、及び徂徠の研究に影響を受けたとみられる後人の楽律・琴学関係資料に対し、書誌事項の見直しを行い、目録・解題の作成に着手した。 ②徂徠著『琴学大意抄』の注釈を進め、その一部を「荻生徂徠著『琴学大意抄』(荻生家所蔵 徂徠自筆稿本)注釈稿(二)」として発表した。 ③昨年度に引き続き、徂徠とその周辺における音楽実践の実態を明らかにするために、徂徠が琴(きん、七絃琴・古琴)の実践的知識をいつどのように得たのか、という問題を検討した。特に、明末清初の中国から来日して弾琴を伝えた東皐心越禅師との接点を、唐通事との交友などから改めて調査・検討したところ、徂徠が宝永年間頃にはすでに弟子を通じて琴の実践的知識を得たり、琴に触れる機会があったと推定できたが、論考をまとめるまでには至らなかった。また、徂徠門弟の本多猗蘭、大潮元皓、秋元澹園、大内熊耳らの詩文集から、音楽の実践と研究に関する記述を拾い集め、わかるものは記述時期を推定し、徂徠の事跡との関連を調べて、時系列に並べるなどの作業を進めた。 ④徂徠学を信奉した儒者であり、且つ東皐心越の琴派に属した藤澤東ガイ(田+亥)が遺した琴譜(関西大学図書館泊園文庫所蔵の東ガイ自筆本・手沢本)に基づき、東ガイが設立した泊園書院で江戸後期~明治期に演奏されていた琴歌数曲の再現演奏・録画を行った。以上の作業を通して、この時期には徂徠学派といえども、徂徠が探求した古楽再興(琴の古楽譜『幽蘭』等により周・漢の遺音たる大楽を再興させるといった探求)はすでに受け継がれておらず、実際に演奏可能な琴歌を用いての礼楽の実践という柔軟な有り様に落ち着いていたことが、理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
北海道居住のため、本州各地に何度か資料調査に行く予定であったが、新型コロナウィルスの影響で、全く調査に行くことができず、大学等の図書館の利用もできなかったため。また、昨年度に引き続き、出版社の事情により、予定している出版物の刊行も遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
①徂徠の音楽に関する著作の諸伝本、及び関連する資料の目録・解題の作成を進める。②『楽律考』『楽制篇』『楽曲考』の訳注、『琴学大意抄』の注釈の完成を目指す。③徂徠とその周辺における弾琴実践に関する論考をまとめ、雅楽に関する研究と実践の実態について考察を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:計画していた資料調査のための出張が全て中止になったことによる。 使用計画:①(出張が可能となった場合)遠方への資料調査のための旅費、②資料の複写費、③情報処理機器(コンピューター、SDカード等)、関連する書籍の購入等に使用する。
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