研究課題/領域番号 |
17K02311
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
越川 倫明 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (60178259)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 対抗宗教改革 / ティントレット / 異端思想 |
研究実績の概要 |
平成30年度を通じて、引き続き16世紀中葉までのイタリアにおける宗教思潮に関する調査を継続した。特に、ベネデット・ダ・マントヴァの『キリストの恩恵』の読解を進め、カトリック側からは異端とされる「信仰のみによる義認」の問題について検討を進めた。ヴェネツィア共和国における異端審問の導入に関しては、教皇特使ジョヴァンニ・デッラ・カーザに関する文献収集を継続し、また、同人物の美術界との関わり(ティツィアーノ、ダニエーレ・ダ・ヴォルテッラ等)についても調査を進めた。 前年度3月にパリで訪問した展覧会「ティントレット:天才の誕生」について、研究史の文脈をふまえた展覧会評を執筆し、東京藝術大学西洋美術史研究室紀要で公刊した。また、10月にはヴェネツィアのパラッツォ・ドゥカーレ美術館を会場とする大回顧展「ヴェネツィア・ルネサンスの画家ティントレット」を視察し、同展の企画者であるロバート・エコルス氏らと意見交換を行なった。 11月には、ニューヨークのモーガン図書館付属素描研究所のジョン・マルチャーリ氏の招待により、同図書館で開催中の展覧会「ティントレットのヴェネツィアにおける素描」を訪問するとともに、同館の企画による小シンポジウムにて口頭発表および関連するディスカッションを行なった。また、同展覧会に関する論評を『マスター・ドローイングス』誌に執筆することを依頼され、その準備を行なった(令和元年に刊行の予定である)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度における実施事項は、同年がヴェネツィア画家ヤコポ・ティントレットの生誕500年記念の年にあたり、欧米各国で重要な記念の催し(展覧会、シンポジウム)が開催されたため、そうした催しに沿ったかたちで調査活動を行なうことになった。そのため、研究課題本来の宗教思潮の状況に関してはやや進捗が滞った感は否めないが、半面、ティントレットを中心とする16世紀ヴェネツィア絵画に関して、宗教図像の問題を含む最新の研究状況を吸収するよい機会となった。当初計画に記した宗教思潮および美術分野における重要事項を編年的に整理する作業は、継続的に進められている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年は計画の最終年度にあたるため、成果に基づく口頭発表および成果論文の執筆に集中していく。主に扱っていくトピックとしては、ヴェネツィアにおける異端審問の導入と俗語訳聖書の禁止の問題、義認をめぐるプロテスタント/カトリックの議論と宗教図像の傾向の相関性の問題、絵画における図像上の検閲の問題などである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ごく少額の残余金が生じたため、次年度に使用することとした。
|