研究課題/領域番号 |
17K02314
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
朝倉 三枝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (90508714)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 異文化接触 / パリ・モード / 藤田嗣治 / ジャン・デュナン / ソニア・ドローネー / テキスタイルデザイン |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀初頭、ヨーロッパに現れた非西欧圏の造形物の影響が、絵画や彫刻にとどまらず、パリのモードにまで及んでいたことを明らかにしようとするものである。このテーマに基づき、本年度は以下の通り海外で調査を行った。 1.平成29年9月にスペインとフランスで調査を行った。マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館では、第一次世界大戦中にこの地に滞在していたソニア・ドローネーの回顧展を訪問し、ドローネーのスペイン時代に関する資料を得るとともに、彼女がアフリカの造形に影響を受けた服作りを開始するのが1920年代半ばからであることを確認した。また、フランスではパリ郊外にあるミュゼ・メゾン=アトリエ・フジタを訪問し、藤田が1929年にフランスのルシュール社のためにデザインしたテキスタイルデザインに見られる漢字のモティーフの着想源を特定することができた。 2.平成29年11月にもフランスで調査を行い、20世紀初頭に古代ギリシャや中近東、日本の影響を受け、服作りを展開したマリアノ・フォルチュニィの回顧展を訪問したほか、パリ古文書館と装飾美術館付属図書館で、ジャン・デュナンの漆布やアフリカの布に関する新たな資料を得た。 3.平成30年2月末から3月初頭に、ベルギーとオランダで調査を行った。アムステルダムの国立美術館所蔵の漆コレクションを通して、日本の工芸品の影響が早くも17世紀オランダの地に及んでいたことを確認した。また、ベルギーのハッセルトモード美術館では、日本の漆の質感を再現した生地で仕立てたコートなど、1920年代の所蔵作品の中でも特に日本や中国の影響の見られる衣服について調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、20世紀初頭にヨーロッパに現れた非西欧圏の造形物の影響が、絵画や彫刻にとどまらず、パリのモードにまで及んでいたことを明らかにし、現代モードの幕開けを異文化接触という観点から読み解くことにある。当初は、初年度にアフリカの染織品がどのような経緯でフランスに伝えられたのか、その移入の経緯を明らかにすることを計画していたが、その調査と並行して、今年度は画家の藤田嗣治の手がけたテキスタイルデザインや、ソニア・ドローネーの衣服など、その他のテーマについても同時に調査を行った。そのため、アフリカの染織品の移入に関しては研究が遅れているが、その他のテーマに関しては初年度から着手できた。なお、藤田のテキスタイルデザインについては貴重な資料の発見もあり、大きく進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にも、アフリカの染織品や、藤田嗣治やソニア・ドローネー、ジャン・デュナンに関する調査をフランスの美術館や図書館で引き続き行う。可能であれば、関連する資料があると予測されるベルギーやウィーン、イギリスでも調査を行いたい。特に藤田に関しては、彼が1929年にデザインを提供したルシュール社のテキスタイルで仕立てられた衣服などの実物品が現存しないか、調査を行いたい。また、1年目の調査のなかで関心を抱いたマリアノ・フォルチュニィの仕事も本テーマに合致するため、ギリシャや日本、中近東の要素を取り込んだフォルチュニイの衣服が1920年代のパリでどのように受容されたのかについても考察を行いたい。
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