研究課題/領域番号 |
17K02314
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
朝倉 三枝 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (90508714)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 異文化接触 / 両大戦間期 / パリ・モード / テキスタイル・デザイン / ポール・ポワレ / ジャンヌ・ランバン / 藤田嗣治 |
研究実績の概要 |
2019年9月にフランスで調査を行った。パリの装飾美術館図書館では、クチュリエのポール・ポワレの創作における異国趣味に関する調査を行い、日本の図書館で所蔵が少ない1910年代初頭のFeminaやLa vie heureuseなどモード雑誌を閲覧し、複数の新資料を見出すことができた。また、ケ・ブランリー美術館で開催中のフェリックス・フェネオン展を訪問し、20世紀初頭に美術批評家として活躍したフェネオンがフランスにアフリカ美術を紹介する重要な役割を担っていたことを知ることとなった。同展を通して、フランスへのアフリカ美術の移入に関する数多くの資料を得ることができた。また、9月の調査では、ランスに赴き、画家の藤田嗣治に関する調査も行った。1966年に藤田の構想によって造られたノートル=ダム・ド・ラ・ペ礼拝堂は、第二次世界大戦後、フランスに帰化し、フランス人画家として生涯を終えた藤田の遺言とも称される最晩年の仕事であるが、日本とフランス、二つの国の間で揺れ動きながら創作を続けたこの画家のアイデンティティのありようについて新たな視点を得ることができた。さらにランス美術館には藤田の作品を集めた展示室があり、これまで未見だった1910-20年代の作品についてデータや関連資料を収集した。 また、スペイン人画家マリアノ・フォルチュニのテキスタイルや衣服制作に関するこれまでの研究成果の一部を、三菱一号館美術館で開催された「マリアノ・フォルチュニ―織りなすデザイン展」(2019年7月6日~10月6日)の図録に論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
かねてより取り組んできたマリアノ・フォルチュニのテキスタイル・デザインに関する研究成果を、今年度開催されたフォルチュニ展の図録に論文として発表することができたので一定の進展をみたといえる。ただし2020年3月に最後の調査をフランスで行う予定であったが、コロナウイルスの感染拡大を受け、中止となったため、アフリカの染織品がフランスに伝った経緯に関する調査・考察については遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の期間延長が承認されたため、事態が収束してから改めて海外で調査を行う。特にアフリカの染織品がどのような経緯でフランスへと渡ったのか、その移入の経緯を調査する。また、アール・デコ期のフランスの染織品への影響については、当初の予定より研究が遅れているので、集中的に調査・考察を進めたい。 次年度が本研究の最終年度となるため、これまで取り組んできた、ソニア・ドローネーやマリアノ・フォルチュニ、藤田嗣治など、芸術家によるテキスタイル制作について、またポール・ポワレやジャンヌ・ランバン、ガブリエル・シャネルなど、クチュリエの創作における異国趣味に関してそれぞれ考察をまとめ、20世紀初頭という時代に、アフリカや日本、中国など、非西欧圏の影響がパリのモードにどのように現れたかを検証し、論文や口頭発表などでその成果を公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたフランスの海外出張が、コロナウイルスの感染拡大の影響で中止せざるをえなかったため、旅費を繰り越すこととなった。事態が収束したら、改めて調査を実施するが、現在、特にコンゴの染織品に関心があるため、ベルギー経由でフランスにアフリカの染織品が伝った経緯も視野に入れ、可能であれば1910年にベルギー領コンゴ博物館の名でブリュッセル郊外に開館した王立中央アフリカ博物館でも調査を行う。また、フランスではケ・ブランリー美術館や国立移民史博物館などで資料収集を行い、研究の遅れが生じているアフリカの染織品のフランスへの移入に関する考察を進め、最終年度にふさわしい研究成果をまとめ、公表したい。
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