元来信仰の対象である仏画は、脆弱な材質と相俟って誰もがいつでも調査できる性質を持たない。特に台密画像は、元亀2年(1571)信長による焼き討ちで比叡山が、文禄4年(1595)秀吉による闕所で園城寺がいずれも存亡の危機に晒された際、多くが散逸した。そのため現在の所蔵先は、必ずしも当該宗門に限らない。本研究では、東密に比して不明な点が多い台密画像の有様を総括するとともに、光画像計測法を現存遺例に適宜応用することで正確かつ詳細な観察結果を図像と様式の両面で獲得し、個々の歴史上における確かな位置付けを積み重ねることができた。なお、その成果の一端を2021年3~5月にパリ大学でも発表する予定である。
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