研究課題/領域番号 |
17K02325
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鎌田 純子 帝京大学, 文学部, 准教授 (60390746)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東照宮縁起絵巻 / 住吉家 |
研究実績の概要 |
昨年度は、コロナ渦の影響があり、残念ながら美術館、博物館における新たな調査を実施することができなかった。そこで、これまで調査してきた画像データの分析が研究の中心となった。 研究者は既に、現存するすべての「東照宮縁起絵巻」の調査をすませている。すなわち、狩野探幽による日光東照宮本、住吉家による和歌山東照宮本、岡山東照宮本、日光輪王寺本、大阪城天守閣本の全5本である。それらの画像の比較・分析作業をおこなった。 その結果、住吉家がおこなった「東照宮縁起絵巻」の写しの作業は、単純な模写ではなく、実は様々な部分で異なることがわかった。これは、同じ絵師の家で、伝存する粉本がありながらも、新たな製作の際には、試行錯誤が加えられていることが推察できる。どのような理由で変化を加えているのか。それを今年度、考えてゆきたい。 また、江戸時代後期に製作された「東照宮縁起絵巻」は、先行する合戦図などをもとに考証した成果が加えられている点も重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに知られている、現存する「東照宮縁起絵巻」全5本の調査は終了している。また、東京国立博物館が所蔵している、板谷家資料の中に含まれる「東照宮縁起絵巻」の下絵やメモ書などの調査も実施した。 昨年度はさらに、住吉家による他の絵巻、たとえば根津美術館所蔵の住吉弘尚による「酒呑童子絵巻」の調査をおこない、比較作業を実施する予定であった。研究者は、以前、同館での展示「酒呑童子絵巻」を見学し、「東照宮縁起絵巻」との共通点があることをいくつか目視していたからだ。 このような住吉家による他の絵巻との共通点を知ることができれば、江戸時代後期における住吉家での絵巻製作の実態を知ることができる。しかし、昨年度はコラナ禍の影響により、調査を断念せざるを得ず、今年度、実施できることを期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究期間の最終年にあたるため、これまでの成果を公開すべく、研究の続きと準備をおこなう。まず、現存する「東照宮縁起絵巻」すべての画像を公開したいと考えている。しかしこれには慎重な検討が必要である。絵巻物は、横に長大な形態のため、出版物での公開には限界がある。小さな画面を刊行しても、あまり意味はないだろう。そのため、デジタルでの公開を含め、どのような方法があるかを模索してみたい。これは、将来的に美術史研究における教育普及の問題にもつながる。 さらに、コロナ禍が収束すると考え、実施できていない美術館での調査をできる限り実施し、「東照宮縁起絵巻」との比較作業をおこないたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度は、研究成果の公開のため、出版ないしはデジタル公開費などのために、大半を使用予定である。また、昨年度実施できなかった調査費用にも充てる予定である。
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