研究課題/領域番号 |
17K02337
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研究機関 | 公益財団法人三井文庫 |
研究代表者 |
小林 祐子 公益財団法人三井文庫, 文化史研究室, 主任学芸員 (60399334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 象牙彫刻 / 牙彫 / 安藤緑山 / 近代工芸 / 蛍光X線分析 / 超絶技巧 |
研究実績の概要 |
1.平成29年度は研究計画にしがたい、安藤緑山の作品調査をおこなった。調査では、作品の熟覧、採寸、および全図・部分図・作者銘・付属品などの詳細な写真撮影をおこなった。作品情報、撮影した写真はデータベースを用いて整理した。 2.これまでにおこなった作品および資料調査を踏まえ、担当した特別展「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」(会期:平成29年9月16日~12月3日、会場:三井記念美術館)の図録に、論文「牙彫師・安藤緑山―作者銘と委嘱家、受容者などの問題について」を発表した。 3.2の特別展開催中に、これまで一切不明であった安藤緑山のご遺族から連絡があり、聞き取り調査が実現した。これにより従来唱えられてきた本名、雅号のよみかた、生没年などに誤りがあったことが判明した。これにより長らく不明とされてきた、緑山の人物像・履歴に関する研究が大きく前進することとなった。本件で得られた新知見の一部を、[資料紹介]「安藤緑山の履歴に関する新知見―遺族への聞き取り調査を通して―」(『三井美術文化史論集』第11号、三井記念美術館、平成30年1月)において発表した。 4.本研究の目的のひとつは、制作技法が次世代に伝えられず、いまだ謎とされている安藤緑山の写実的な彩色牙彫について、文化財の光学的調査、すなわちX線透過撮影、蛍光X線分析、高倍率の顕微鏡による細部観察などを用いて、その制作技法や著色材料を解明することである。平成29年度は、一部の個人所蔵の緑山作品について、着色材料を明らかにするため、国立民族学博物館准教授・日髙真吾氏を中心とする研究グループに依頼し、蛍光X線分析査を実施した。計測したデータは、現在日髙氏のグループにおいて分析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安藤緑山の作品調査については、おおむね予定通りに進めることができた。
作品の光学的調査については、X線透過撮影、蛍光X線分析、高倍率の顕微鏡による細部観察などを、平成29年度に3回ほど実施する予定であったが、当方、作品所蔵者、研究協力者のスケジュールがうまくかみ合わず、蛍光X線分析を1回実施するにとどまった。本件については、引き続き次年度以降に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も安藤緑山の作品調査を引き続き進める。平成29年度に新たに台湾における作品所蔵の情報提供があったため、国内調査に加え国外での調査も実施する予定である。調査では、作品の熟覧、採寸、写真撮影などをおこない、データベースの拡充をはかる。
また前年度実施できなかった作品について、X線透過撮影、蛍光X線分析、高倍率の顕微鏡による細部観察などの光学的調査をおこない、制作技法や著色材料を明らかにする。
さらに、安藤緑山以外の作者が制作した彩色牙彫にも視野を広げて、作品の情報を収集し、実作品の調査、写真撮影をおこなう予定である。これらを緑山の牙彫と比較・検討することで、制作技法や着色材料の特質を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者に依頼して実施する牙彫作品の光学的調査(X線透過撮影、蛍光X線分析、高倍率の顕微鏡による細部観察など)を、平成29年度に3回ほど実施する予定であったが、当方、作品所蔵者、研究協力者のスケジュールが合わず、蛍光X線分析を1回実施するにとどまった。当該調査は次年度以降も引き続き実施するため、次年度使用額は光学的調査にかかる旅費、機器運搬費、人件費等に使用する。 また平成29年度に、新たに台湾における作品所蔵の情報提供があったが、作品所蔵者の都合により、調査の実施が平成30年度に先送りされた。次年度使用額は本件の調査旅費としても使用する予定である。
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